【喫茶店の思い出】青春の味、甘くほろ苦く

 
福島市のローゼンケラー。カウンターの天板は丸上茶房時代から使われている一枚板

 いつから喫茶店をカフェ、デザートをスイーツと呼ぶようになったのだろう。お薦めの喫茶店と思い出を募集したところ、ホットケーキとクリームソーダが似合う懐かしい店から、現役の店まで、喫茶店にまつわる数々の情報が寄せられた。

 まず、福島市出身者から複数の支持を集めたのが「サボイア」という懐かしい店。情報をまとめると、同市上町にあり、石造りの外観で店内にはらせん階段と池があったそうで、モダンな店だったことがうかがえる。

 名物メニュー

 時代はぐっと最近になり、同じく県北から。「高校生の頃は福島市にある『珈琲の街』で友達と語り合っていました。アンティークな雰囲気で、時を忘れて居座っていました。ヨーグルトソフトが大のお気に入りでした」(demi1114demiさん)。「(伊達市)保原町にあった『まほうのかけそこね』です。『魔女が作ったナポリタン』『呪文をかけるとさらにおいしくなるチーズグラタン』など魔法に関わるメニューがたくさんあってどれもおいしかったです」(福島市・魔女っ娘メグちゃんさん)。こちらは現在「kimama cafe」の名前で営業している。

 ほかにも各地の名店が続々と。「石川町の『ポエム・ロビー』が印象に残っています。名物のスパゲティグラタンのボリュームがすさまじく、おなかをすかせて行ったのに半分しか食べられず、持って帰り夕飯にも食べました」(郡山市・ねこのしきぶとんさん)。「喜多方市にある『喫茶店くら』。ナポリタンが絶品です。一度だけ憧れの先輩とお昼を食べに行ったことがあったなー」(つーてーじぃさん)。「専門学校に通っていた時、講師の女性に恋をして、喫茶店で待ち合わせ。いつまでたっても現れず、コーヒーを飲んで終わりました。青春!」(虫歯さん)

 おいしそうな情報からほろ苦い思い出まで、県内の喫茶店物語は尽きない。

 黎明期、試行錯誤

 前出の「サボイア」よりもさらに時代をさかのぼり、福島市の喫茶店文化の黎明(れいめい)期を知る、ビアレストラン・ローゼンケラーの小林篤子さん(68)に話を聞いた。

 同店の前身は、1953(昭和28)年に開店した喫茶店、丸上茶房(まるじょうさぼう)だ。すずらん通り(現パセオ通り)にあり、小林さんの父がコレクションしたLPレコードから洋楽が流れる店のキャッチコピーは「コーヒーと名曲」。当時は喫茶店が珍しく、初めは試行錯誤だったという。平日は近隣の銀行員や公務員らでにぎわい、週末は家族を連れてやって来たという。また、当時は福島大や福島医大のキャンパスも近くにあり、学生たちのたまり場になっていたそうだ。

 小林さんは、喫茶店時代から母がそうしてきたように、お客さんとのコミュニケーションを大切にしている。「時代が変わっても『子どもさん大きくなった?』『たまには奥さん連れてきな』なんていうお客さんとのやりとりは変えたくない。『うるさいおばさん』と言われても続けていきます(笑)」

 雰囲気だけでなく、コミュニケーションもレトロな懐かしさを求めて喫茶店を訪れたい。(佐藤香)