【納豆(下)】給食の味、長年愛され

 
粒の大きさやたれの違いなど、県内のスーパーにはさまざまな種類の納豆が並ぶ=福島市・ヨークベニマル福島西店

 さまざまな食材と合わせたり料理に使ったりと、福島県民に愛される納豆。今回は納豆の栄養や、お薦めの商品を「ココほれ!」する。

 広い売り場

 まずは納豆の栄養について、発酵食品に詳しい管理栄養士でヘルシークッキング教室主宰の橋本ヨシイさんに尋ねた。それによると納豆は、たんぱく質、脂質、ビタミン、ミネラルがバランスよく含まれているという。また、悪玉コレステロールの吸収抑制に働く植物ステロールやイソフラボン、サポニン、レシチンなど機能性成分が含まれている。

 さらに、納豆菌による発酵で、原料である大豆の栄養成分が吸収されやすくなり、ビタミンB類や、酵素の一種であるナットウキナーゼなどが作られ、血栓や高血圧を予防する効果が期待できる栄養価の高い食品だという。

 業界大手、「おかめ納豆」でおなじみのタカノフーズ(茨城県)の納豆営業推進マネジャー市村真二さんにも話を聞くと、地域別に見ると東北は全国で最も納豆が売れるエリアだという。そのため、東北のスーパーは他地域に比べて納豆売り場が広いそうだ。

 改めて福島市内のスーパーの納豆売り場を見てみると、粒の大きさや容量の違いに加え、たれの味付けも種類が豊富で、さまざまな納豆が並んでいる。さすが納豆購入額全国1位の福島市だ。

 ご当地ものも

 これだけたくさん商品があれば、好きな銘柄やこだわりがあるはず。投稿にも商品に関するものが多数あった。「子どもは普通の納豆ですが、大人は『山わさび納豆』を食べています。からしの代わりにわさびが入っています」(二本松市・がぶにゃんさん)、「『たまごたれ納豆』が大好きです。会社でも弁当のご飯にのっけて食べます」(いもくりかぼちゃん)。

 これら大手メーカーの商品にまざって、ご当地納豆の情報も。「川俣町の山木屋に納豆の自販機があります」(二本松市・こうさん)、「子どもたちは給食の納豆が一番おいしいと言っています。赤井食品(伊達市)さんの納豆です」(たらりんさん)、「桑折町出身ですが、給食は国見の樋口さんの納豆が出ていました。納豆嫌いな友達もこれは食べていました」(福島市・自転車ぱんださん)、「温泉などへ出かけたときに、ご当地納豆を購入します。お気に入りは国見納豆。大粒なのが私好み」(郡山市・ろみさん)。

 そこで、国見町で納豆を製造している樋口食品を訪ねた。店主の樋口正利さん(71)の父親が1948(昭和23)年ごろ創業した老舗だ。納豆は、大豆を洗って水に浸し、加熱して軟らかくなったところに納豆菌をかけてパックに詰め、発酵させて冷やすという、およそ2日がかりの工程で完成する。これを毎日手作業で行っている。

 樋口さんにおいしさの秘密を聞くと「特別なことは何もしていない。手を抜かないで真面目に、ということかな」。そんな誠実さが、長く愛される理由なのだろう。

 同社の納豆は地元の学校給食に提供しているので、地域の人にとっては子どもの頃から慣れ親しんだ味だ。町周辺のスーパーや道の駅国見あつかしの郷、東北道国見サービスエリアなどで購入できる。

 つい買い過ぎてしまったときでも納豆は冷凍保存できる。食べるときは冷蔵庫で自然解凍して。「できれば捨てずに食べてほしいというのが、われわれの切なる願いです」と樋口さん。福島県民の健康を支えている(かもしれない)納豆、一粒一粒大切に味わいたい。(佐藤香)