【学校の掃除で膝当て】いわき中心、清掃の慣習

 
いわき市の小学生が使用している膝当ての例

 編集局内で「いわき市の小学校では掃除の時に膝当てを着けていたが、他の地域ではどうだった?」という疑問の声が上がった。知らない人にとっては謎の風習だが、読者やリスナーの声を頼りに探ってみたい。

 同市のある小学校で入学時に配られる、学校生活の決まりが書かれた文書を入手した。そこには「清掃は運動着、帽子、ひざあてを着用する」とだけ書かれていて、膝当てについて特段の説明はない。同市の小学生にとって、膝当ては運動着と同じぐらい当たり前のもののようだ。

 そのため、他地域の出身者からは「郡山市出身でいわきに嫁いだのですが、長女が小学校入学の時に『膝当てって何?』と思いました」(メひかりさん)という戸惑いも。逆にいわき市出身者からは「膝当ては全国共通じゃなかったんですか!?」という驚きの声が。しかし、同じいわき市内でも「植田小学校は膝当てはない! 還暦を迎えた自分も使っていなかったし、娘も孫もなし」(レオママさん)、「いわき市在住です。小学生の時はありませんでしたが、中学では膝当てが必須になりました。隣の小学校では使っていたそうです」(えす999さん)と、地域差があるもよう。

イラスト・おくさん

 富岡、浪江でも

 いわき市以外でも「富岡町では膝当て使ってました!」(あーぽんさん)、「学校掃除の必需品だと思っていました」(福島市・いすけさん)、「南相馬市ですが、今年入学する小学校の準備物に書いてありました」(メロンパンナさん)、「通っていた小中学校では掃除をするときにゴム付きの布を膝に当てていました。浪江町出身です」(福島の唄い屋さん)など、浜通りを中心に膝当て使用の投稿があった。

 さらに調査を進めると、現在いわき市では多くの学校で掃除の時に膝当てを着けていて、学校独自の判断で行っているため市内でもばらつきがあることが分かった。

 ではこの膝当て、一体どんなものなのか。「非膝当て文化圏」出身の記者は、バレーボールのサポーターのような厚手のものを想像したが、話を聞くと、事務作業や園芸で使うアームカバーのような、薄手のものが多いそうだ。ほかにも、タオル生地やデニム、キルティング、ジャージーなどが挙げられ、素材や色については、特に決まりがない学校が多いようだ。

 基本は手作り

 では、この「地域限定品」をどうやって調達しているのか。投稿や取材の結果をまとめると、基本は手作りだが、市内のスーパーの衣料品売り場などには、新年度が近づくと雑巾などと一緒に既製の膝当てが店頭に並ぶという。また、手芸用品店で作ってもらうという人も。

 そもそも膝当ては何のために着けるのか。素朴な疑問をぶつけてみると、「そういえば、何のため?」「自分も小学生の頃からやっていたので、そういうものだと思っていた」という意見が大半だった。「膝当て文化圏」出身者にとっては、親子代々当然のものとしてなじんでいる様子がうかがえる。浜通りのある学校関係者は「膝当てをすることで、膝を突いて丁寧にお掃除をしよう、という気持ちになるのでは」と推測する。

 40~50代を中心に、小学生の頃は膝当てを着けて掃除をしていたという証言が県内各地から得られた。かつては各地の学校で採用されていた膝当てが、時代の流れとともに減少したようだ。しかし、なぜいわき市を中心とした地域では今も続いているのか、謎は深まる。(佐藤香)