５０年前一念発起

　外はカリッと、中はやわらかジューシーなから揚げ、野菜たっぷりのモツ炒め、ボリュームのあるソースかつ重・うどんセット―。郡山市熱海町のドライブイン幸華には、開店と同時に腹をすかせたサラリーマンや家族連れらが流れ込む。お目当てはさまざまだが、どれも地元住民なら一度は食べたことがあるおなじみの味だ。

　特に人気はモツ炒めやニラレバ炒めの定食。だからこそ、モツやレバーの下ごしらえは特に気を入れている。モツは店内でカットして煮る、という下処理に一日数時間かける。レバーは鮮度を保つため、仕入れたその日に提供することにこだわっている。社長の吉田勝江さん（５９）は「少しでもいい物を食べてもらいたいからね」と笑顔を見せる。

　こうした看板の炒め料理に欠かせないのは、味付けで使われているたれだ。創業当初から変わらない製法で作られており、県産のリンゴやニンニクなどを使って作られたたれは野菜やモツ、レバーとの相性が抜群だ。

　創業は５０年ほど前。トラックの運転手だった会長の父年則さん（８８）が一念発起し、同市清水台に１号店を開店した。「素人ながらに手探りの状態で始めた」と振り返る年則さん。店名は年則さんが好きな言葉だという「幸せの華」を縮めて付けた。目指すのはいろいろな人に来てもらえる大衆食堂。その思いは今も変わらない。

　約４０年前、現在地にドライブイン幸華が誕生。時を同じくして、中学卒業後に約５年間、市内の飲食店で修業した勝江さんが店を手伝うようになり、調理場を任されるようになった。出店当時は周りから「熱海町では冬場に客足が伸びないだろう」と言われ、実際最初の数年間は勝江さんが冬場にアルバイトをしなくてはならない時期もあった。

　転機となったのは数年後。スノーボードがブームとなり、同市と隣接する猪苗代町のスキー場に向かう人たちの間で料理のボリュームの良さが評判を呼び、県内外から来店する客が増えていった。

　伝統は孫世代へ

　時代の移り変わりとともに客層や世代も変わってきたが、勝江さんは「常連さんから『やっぱりここだな』と言ってもらえることが何よりもうれしい」と顔をほころばせる。現在は娘の真由美さん（３７）と夫裕昌さん（３９）も調理場に立つ。

　子どものころから店を手伝っていた真由美さんは「いっぱい人が来て、楽しんでもらえる空間をなくしたくない」との思いを抱く。裕昌さんは元々電気工事の仕事をしていたが、真由美さんの思いに応えて結婚を機に調理人に転職。「全くやったことがないことだったので不安もあったが、優しく教えてもらえたので困ったことはなかった」と裕昌さん。勝江さんと鍋を振る姿も板についてきた。

　親から子へ伝わる伝統の味と大衆食堂への思いは、子から孫の世代へ脈々と受け継がれる。きょうも店内には、料理を食べた人たちの「幸せそうな笑顔の華」が咲く。（近内雅基）

ドライブイン幸華の前に立つ（左から）真由美さん、裕昌さん、年則さん、勝江さんと妻の恵美子さん。国道４９号に面した店には開店と同時に多くの人が流れ込む

【住所】郡山市熱海町安子島字反畑６５の７

【電話】０２４・９８４・４０５９

【営業時間】午前１１時～午後８時半（ラストオーダー同８時）

【定休日】月曜日

【主なメニュー】
▽モツ炒め定食＝９００円
▽ニラレバ炒め定食＝９００円
▽野菜炒め定食＝９００円
▽からあげ定食＝８７０円
▽焼肉定食＝１０００円
▽ソースかつ重・うどんセット＝９８０円
▽天重・もりそばセット＝１０００円
▽牛丼・ラーメンセット＝９８０円
▽ラーメン＝６００円
▽タンメン＝７００円
▽かけそば・うどん＝６００円
▽カレーそば・うどん＝７００円

丼いっぱいのカツが食欲をそそるソースかつ重・うどんセット（手前）。奥は人気メニューのモツ炒め定食。どのメニューもボリューム満点だ

　育てた野菜も提供

　店のすぐそばの畑では、年則さんがキャベツやタマネギなどの野菜を育てている。今年は気候の影響もあり、収穫量が減ってしまったそうだが、これからの季節にはキャベツが取れるそうだ。

　モツ炒めなどのメニューにもこの畑で取れたて野菜が使われることもあるという。年則さんが丹精した野菜を勝江さんと裕昌さんの２人が調理する。親、子、孫の３代が"共演"する逸品が堪能できそうだ。

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　ＮＨＫラジオ第１「ふくどん！」で毎週木曜に連携企画

　まち食堂物語は福島民友新聞社とＮＨＫ福島放送局の連携企画です。ＮＨＫラジオ第１で毎週木曜日に放送される『ふくどん！』（休止の場合あり）のコーナー「どんどんめし」で紹介される予定です。