【まち食堂物語】やなぎや・伊達市 驚きの安さ、活力も注入

 
(左から)斎藤和子さん、佐藤恵吹さん、タカさんの親子。安くて豊富なメニューを提供する(吉田義広撮影)

 親子で切り盛り

 伊達市保原町の住宅街。一見普通の住宅だが、調理場として使っている建物の外壁に書かれた店名や、住宅の玄関にかけられているのれんと営業を知らせる立て看板が「やなぎや」の目印。玄関を開け、店内に入ってまず目を引くのが壁一面に貼られたメニューの数々。そしてその安さだ。

 「昨年値上げしたばかりなんですよ」。店主の佐藤恵吹(えぶき)さん(56)は明かす。チキンカツは400円から520円、あっさりラーメンは250円から400円に。申し訳なさそうに話すが、物価高騰に人手不足で値上げが続くこのご時世、この値段で提供する店は珍しい。

 店名は父巻男さん(2013年に死去)が出身地の保原町大柳にちなんで名付けた。元々は保原町字市柳町で総菜店として始まった。「弁当は自分が生まれる前くらいからやっていたみたいだ」と佐藤さん。3カ所目となる現在の場所で、弁当をメインに仕出しを手がけてきた。

 だが、経営難から多角化を図り、約15年前に食堂もオープンした。当初訪れる客は一日に数人程度だったが、徐々に定着。佐藤さんと母タカさん(83)、妹の斎藤和子さん(53)の親子3人で店を切り盛りする。「普通の家の玄関と同じで、ここから入って良いのかと、調理場の扉を間違えて開けてしまうお客さんもいる」と和子さんは笑う。

 現在は仕出しの配達後、午前11時から店を開ける。スーツ姿や作業着姿など働き盛りの人たちだけでなく、地域のお年寄り、家族連れで店内はにぎわう。壁一面に貼られたメニューは数えてみると50枚以上。目移りして、どのメニューを選ぼうか迷ってなかなか決められない。「よく注文されるのは日替わりのランチとラーメンセット、ザンギです」と佐藤さんは話す。

 訪れるたびに毎回メニューが異なる日替わりのランチ。ある日のランチは豚ロースのしょうが焼きとハムカツ、ご飯、みそ汁、納豆、小鉢のセット。これだけの分量で値段は600円。「お客さんにはできるだけ安く提供したい」。そのために佐藤さんは安く仕入れられる店を選んだり、通常メニューを組み合わせるなど工夫を凝らしている。

 ラーメンセットはラーメンにミニ天丼。しょうゆラーメンと、天丼はミニといってもずいぶん分量があるようだ。昔ながらの食べてほっとする味が客を引き寄せる。

 ご飯進むザンギ

 町の食堂で定番のうどんやそば、ラーメン、カレー、アジフライなどの定食が並ぶ中、一風変わったのがザンギだ。北海道の郷土料理の鶏のから揚げが、なぜ保原のこの店に。「北海道を友達と旅行した時に食べたのがザンギ。これをお店で出そうと思った」と佐藤さん。「ただ、ザンギだけはどうしても600円を超えてしまう」と話すが、それでも十分に安いと感じる。

 ザンギが単品だと思ったら、ご飯とみそ汁、小鉢も付いてくる。普通のから揚げに比べると味は濃いが、ザンギを口にする客のご飯は進む。気がつけばみんな完食し、午後の仕事を頑張る活力も沸いてきた様子。おなかいっぱい食べても懐には優しいランチが保原にはある。(渡辺久男)

お店データ

やなぎやの地図

【住所】伊達市保原町内町15

【電話】024・575・3344

【営業時間】午前11時~午後1時半

【定休日】日曜日、祝日

【主なメニュー】
▽ランチ(日替わり)=その日によって値段は異なる
▽ラーメンセット(ラーメン&ミニかき揚げ丼)=560円
▽カレーセット(カレー&ミニうどん)=560円
▽あっさりラーメン=400円
▽味噌ラーメン=420円
▽塩ラーメン=420円
▽カツ丼=610円
▽ザンギ=670円
▽アジフライ=500円

ラーメンセットとザンギ人気メニューのラーメンセット(左)とザンギ

 ランチ内容を投稿

 交流サイト(SNS)のインスタグラムに店のアカウント(yanagiya15)を2023年2月に開設。ランチのメニューと値段は店内に掲げられているホワイトボードに記載されているが、インスタグラムでその日のランチを紹介することがあるので事前に確認できる。このほか、日替わりの仕出し弁当の紹介や臨時の休店日の案内、仕込みの様子、手軽に作れるバナナのシャーベットも投稿されている。

          ◇

 NHKラジオ第1「ふくどん!」で毎週木曜に連携企画

 まち食堂物語は福島民友新聞社とNHK福島放送局の連携企画です。NHKラジオ第1で毎週木曜日に放送される『ふくどん!』(休止の場合あり)のコーナー「どんどんめし」で紹介される予定です。