【新まち食堂物語】御食事処竹の家・棚倉町 親子3代、持ち味つなぐ

 
「おいしい料理を届けたい」と、天重を手早く仕上げる小針信さん(左)と母順子さん(永山能久撮影)

 棚倉町のシンボルで観光名所「棚倉城跡」。その目の前に店を構える「御食事処(どころ)竹の家」では、観光客や地元の常連客が、桜や紅葉など四季折々の景色を楽しみながら多彩な料理に舌鼓を打つ。「何を注文してもおいしい」「昔から人気の店」と常連客は口々に語る。店主の小針信(まこと)さん(52)は「味をぶれさせず、おいしい料理を多くの人に届けたい」と腕を振るう。

 店の創業は今からおよそ70年前。祖父弥一郎さんが現店舗隣の空き地に店を出した。弥一郎さんが60代の若さで亡くなると、東京都のフレンチ店で働いていた父武男さん(83)が店を継ぎ、創業当時からあったラーメンや定食などの料理にフレンチの技法を掛け合わせたほか、夜の宴会料理も提供するように。ビーフシチューなど洋食のメニューも増えた。

 その後、信さんも都内の割烹(かっぽう)料理店で約8年間修業を積み、26年前に町に戻った。武男さんの洗練されたフレンチの技法を生かした料理に、信さんの材料の持ち味を生かした日本の懐石料理の緻密さが加わった。

 人気ちゃんぽん

 人気メニューは「長崎ちゃんぽん」。あっさりとしながらもこくがあり、奥深い味わいが特徴の長崎ちゃんぽんは、長崎県出身の母順子さん(76)が帰省した時に食べた味を「棚倉町の人にも味わってほしい」と、約40年前に提供を開始。それからは瞬く間に看板メニューになった。

 長崎での味付けは甘めであることから、棚倉の人にも親しんでもらえるようにと、甘さを抑えた味付けに調整。鶏がらや豚、牛のげんこつ、魚介を煮込んだスープを合わせるなど、2日ほどかけて作るこだわりのスープも人気の秘訣(ひけつ)だ。麺は県南地域の人になじみのある白河ラーメンのような縮れ麺を使用している。信さんは「動物や魚介のくせをいかに抑えられるかに気を付けつつも、素材の良さを生かしたスープを取っている」とこだわりを語る。

 大きなエビの天ぷらがのった「天重」も絶品メニューの一つ。弥一郎さんが考案したメニューで、天然で大きなエビを使用し、たれに漬け込むのではなく、濃いめのたれをかけることでエビの食感を生かした料理として成立させている。

 コロナ禍味進化

 人気店だが、客足が遠のいた時期もあった。新型コロナウイルス感染症が流行した時期だ。「お客さんが減ってしまったが、その時間を使って、一から全てのメニューを見直した」と新型コロナ禍を前向きに捉えた信さん。「らーめん」「五目らーめん」のたれなど、全メニューで調味料やレシピを改めて調整する時間に充て、今ではさらに進化した味として自信を持って提供している。

 2022年には店も改装したほか、現在は信さんの長男嘉泰(ひろやす)さん(20)が都内のフレンチ店で修業中だ。「息子が帰ってきたら、2人で『こんな料理はどうかな』『こうしたらいいかな』と話し合いながら、おいしい料理を作っていきたい」と店の展望を語る信さん。3代にわたり多くの人に親しまれた店は、今後も進化を続けながら次代へ受け継がれる。(伊藤大樹)

お店データ

御食事処竹の家

■住所 棚倉町棚倉城跡86の10

■電話 0247・33・3045

■営業時間 午前11時~午後2時、午後5時~同7時

■定休日 日曜日、祝日の午後

■主なメニュー
▽長崎ちゃんぽん=950円
▽らーめん=550円
▽五目らーめん=950円
▽天重=1500円
▽カツ重=1100円

御食事処竹の家人気メニューの天重(手前)と長崎ちゃんぽん

 著名人数多く来店

 店にはお笑い芸人あばれる君(矢祭町出身)や脳科学者茂木健一郎さん、宇宙飛行士山崎直子さんらのサインが並ぶ。信さんは「歌舞伎役者の中村国生さんや中村福助さんらが来てくれた時が印象的。気さくに話しかけてくれたり、ブログに載せてくれたりした」とほほ笑む。

御食事処竹の家

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 NHKラジオ第1「ふくどん!」で毎週木曜に連携企画

 新まち食堂物語は福島民友新聞社とNHK福島放送局の連携企画です。NHKラジオ第1で毎週木曜日に放送される『ふくどん!』(休止の場合あり)のコーナー「どんどんめし」で紹介される予定です。