【新まち食堂物語】同気食堂・西会津町 心も満腹、赤髪女将の店

 
「一人でも多くのお客さんに満足して帰ってもらいたい」と話す待子さん(右)と源太さん(吉田義広撮影)

 西会津町の中心街にある創業103年を迎える同気食堂。精肉店を併設する食堂には、昼から夕まで地元住民や観光客らがひっきりなしに訪れる。赤髪がトレードマークの4代目店主の氏家待子(まちこ)さん(65)は「一人でも多くのお客さんに満足して帰ってもらえる食堂であり続けたい」と明るい笑顔で客を出迎える。

 食堂は1921年創業。待子さんの祖父の故忠義(ちゅうぎ)さんが越後街道の宿場町として栄えた野沢地区の一角にオープンさせた。店名は「お客さんと同じ気持ちで」との思いを込めて「同気食堂」。待子さんは「(忠義さんは)よく自分がお客さんになった気持ちで商売しなさいと言っていた」と振り返る。

 父の故忠松さんが2代目、母のシヤ子さん(92)が3代目を務め、待子さんは関東の大学を卒業後に西会津町に戻り、店を継いだ。「ゆくゆくは自分が継ぐのだろうと、自然と覚悟ができていた。調理方法は直接教えられたのではなく、両親の姿を見て学んだ」。現在は待子さんとシヤ子さん、弟の忠さん(61)、長男の源太(もとひろ)さん(37)の4人を中心に精肉店と食堂を切り盛りしている。

 健康増進に一役

 食堂の人気メニューは肉料理。中でも、約300グラムのリブロースを塩コショウでシンプルに味付けし、丸ごと焼いたポークソテー風の焼肉定食が好評だ。ほかにも西会津町名物のみそラーメンの上に、とんかつと地元の新鮮野菜をどっさりとのせたとんかつみそラーメンや、肉なべ定食など、肉料理を中心に40種類以上のメニューが楽しめる。

 「実は西会津では豚肉を積極的に食べる文化があるんです」と待子さん。町民の平均寿命が県内のほかの自治体よりも低かったことに危機感を覚えた西会津町が、93年から「百歳への挑戦」をスローガンに町一丸となった健康づくりを推進。取り組みの一環として、沖縄県の「長寿の村」として知られる大宜味(おおぎみ)村に倣い、ビタミンB1やタンパク質が豊富に含まれる豚肉を摂取する食生活指導が行われた。

 指導の成果もあってか、同気食堂では地元住民が好んで豚肉料理を注文する。「最近は100歳超えの長生きの人が増えてきた。豚肉文化が町に根付いているのを感じる」。食堂は町民の健康増進にも一役買っている。

 会津名物目指す

 食堂は「赤髪の女将(おかみ)がいるお店」として親しまれている。待子さんが約20年にわたり赤髪を貫いているのにはある思いがあった。「私が暗かったらお客さんも暗い気持ちになる。明るい色の服を来て赤髪にすることで、お客さんの心を明るくしたかった」。赤髪に染めたばかりの頃は「目立って恥ずかしかった」というが、「最近は明るい髪色の若者も増えてきて違和感がなくなってきたかな」と笑う。今では「女将に会いに来た」という客が現れるほど、"名物女将"となった。

 「『会津に同気あり』と言われるようなお店を目指したい」と待子さん。これからもお客さんの気持ちに寄り添いながら町を明るく照らしていく。(阿部二千翔)

お店データ

240428syokudou3.jpg

■住所 西会津町野沢原町乙2168

■電話 0241・45・2852

■営業時間 午前11時~午後5時(宴会は要予約で午後9時半まで)。精肉店は午前9時~午後6時。

■定休日 第1、3水曜日

■主なメニュー
▽とんかつみそラーメン=1000円
▽馬刺し定食=1000円
▽焼肉定食=1000円
▽かつどん=950円
▽ソースかつどん=950円

240428syokudou2.jpg 約300グラムのリブロースを塩コショウでシンプルに味付けしたポークソテー風の焼肉定食

 建て替え後の一枚

 建て替えられたばかりの店内で27年前に撮影された一枚。待子さんの父忠松さん=当時(66)=と母シヤ子さん=同(65)=が肉をさばく様子が収められている。待子さんは忠松さんを「趣味が仕事のような人で、年中無休で調理場に立っていた」と懐かしむ。

240428syokudou4.jpg

          ◇

 NHKラジオ第1「ふくどん!」で毎週木曜に連携企画

 新まち食堂物語は福島民友新聞社とNHK福島放送局の連携企画です。NHKラジオ第1で毎週木曜日に放送される『ふくどん!』(休止の場合あり)のコーナー「どんどんめし」で紹介される予定です。