【新まち食堂物語】三松会館・郡山市 街発展支えた大衆の味

 
和食や洋食、中華など100種類以上あるメニューも注文が入れば手早く調理する会長の松崎昭信さん(手前)と聡さん(永山能久撮影)

 郡山市のJR郡山駅前の繁華街の一角に、サラリーマンや学生、家族連れ、宴会客など、さまざまな人がひっきりなしに訪れる店がある。和・洋・中、定食、麺類、丼類など100種類以上のメニューがそろう三松(さんまつ)会館は、昭和20年代後期に創業。今では少なくなった「大衆総合食堂」として街発展の歴史とともに歩み、市民の胃袋を支えている。

 「三松」は、創業者の松崎三治さんの名前にちなむ。18歳からここで働く2代目の松崎昭信会長(86)。70年たった今も調理場で力強く中華鍋を振るう。当初から休憩時間なしの「通し営業」を貫いてきた。「人はいつ食べたくなるかは分からないんだから当たり前なんだ」。駅前の開発が活発だった時代、新幹線の建設に関わった作業員などから、昼夜問わず多くの出前が入った。店で出会った妻直子さんと共に、未明まで店を切り盛りした。「寝る以外は店にいたね」。松崎さんは当時を懐かしそうに振り返る。

 安く早く素朴に

 「なるべく安くて早くて、みんなが食べられる庶民の店」との思いから、料理に余計なものは入れない。手際の良さもあって、提供までのスピードはとても早い。人気メニューのレバニラや中華丼もいたってシンプルな味付けだ。

 「なぜか『三松のレバーだけは食べられる』と言う人もいる。特別なことはやっていないのだけどね」と松崎さん。迷ってしまうほどの豊富なメニューの中、同じものを毎日食べ続ける常連も多い。「お薦めは?」と聞かれたら「ない」と答えているという。「うちの料理は特別なものじゃなく、家庭で出しているものの延長で水や空気みたいなごく普通のもの。だから毎日食べても飽きないんだ」

 名物として知られる紅しょうがの天ぷら「紅天」は20年以上前、大阪から来ていた客との会話の中から生まれた。当初は常連へのサービスとして出していたが、「あの赤いのは何?」と評判を呼び、今ではお酒のつまみとして注文する人がほとんどだという。

 震災翌年に復活

 2011年に発生した東日本大震災では店舗ビルが壊れ、長期休業を余儀なくされた。「三松の復興なくして郡山の復興なし」。そんな思いで再建を進めた。翌12年に休業前と同じメニュー、値段で復活を遂げると、待ち望んでいた人たちでにぎわった。新型コロナウイルス禍で制限があった時は、短い時間であってもできるだけ店を開けた。「食生活を通して社会に貢献する」という創業時からの信念を守り続けた。直子さんは一昨年4月、84歳でこの世を去った。今は長男で社長の聡さん(54)らと共に店を切り盛りしている。

 「食は人間の基本。『おいしい』と『うまい』は違う。俺はお客さんに五臓六腑(ろっぷ)、体全体で『うまい』と感じてもらえるものを作りたいんだ」と思いを語る松崎さん。「できるうちは店に立ち続けたい。遊んだり、旅行に行ったりするより、仕事やってた方が楽しいからね」。大衆食堂としての誇りを胸に今日も腕を振るう。(鈴木祐介)

お店データ

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■住所 郡山市大町1丁目3の13

■電話 024・932・0173

■営業時間 午前11時~午後9時

■定休日 日曜日

■主なメニュー

▽レバニラ定食=700円
▽肉ニラ玉定食=890円
▽三松定食=1150円
▽中華丼=700円
▽オムライス=700円

240526syokudou2.jpg(手前から時計回りに)エビフライ、アジフライ、ハンバーグの三松定食、紅しょうがの天ぷら、レバニラ炒め

 食品サンプル並ぶ

 三松会館の店の前には、オムライス、ラーメン、ギョーザ、中華丼、とんかつ定食など、代表的なメニューの食品サンプルが展示されている。どこか懐かしいその姿は、通行人の目を引き、食欲をそそっている。

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 NHKラジオ第1「ふくどん!」で毎週木曜に連携企画

 新まち食堂物語は福島民友新聞社とNHK福島放送局の連携企画です。NHKラジオ第1で毎週木曜日に放送される『ふくどん!』(休止の場合あり)のコーナー「どんどんめし」で紹介される予定です。