【TRY・消防隊員(上)】訓練のキツさ想像以上

 
引き揚げ救助訓練で、顔をゆがませながら訓練塔を登る記者。地上7メートルの高さを登り降りする訓練はバランスを取るのがとても難しい

 今回トライするのは消防隊員。火災や災害現場を取材するたびに、隊員たちの懸命な姿を何度も目にしてきた。喜多方地方消防本部は昨年5月に訓練塔を新築したばかり。新たな施設で日々の活動を支える訓練に挑んだ。(喜多方支社・斎藤優樹)

 訓練塔に向かうと16人の隊員が隊列を組んで迎えてくれた。体格が良く、規律正しい姿。こちらの背筋が伸びる。これから待つ訓練に向けて表情を引き締めた。あいさつを終え、訓練前のトレーニングだ。オレンジ色の救助服を着用し、姿だけは消防隊員となった記者。外周3周後に短距離のインターバル走に突入した。

 体力に自信がある方だったが、想像を超えるきつさ。次は手足をついた四足歩行のリレーだ。倒れ込みながらやりきったが、チームの結果は最下位。罰として腕立て伏せをすることに。「ここを乗り切れば...」。腹をくくるが、周囲のスピードに付いていけない。ここで心が折れ、早くも一時離脱した。

 隊員の皆さんは、さらに太い縄を波打ちさせるトレーニングなど、間髪入れずに取り組んでいく。参加した隊員は体力テストを通過した精鋭たち。そのすごさに感動してしまった。

 トレーニングを終えると、いよいよ本格的な訓練へ。まずは「引き揚げ救助」だ。高さ7メートルを降下し、倒れている人を救い出して壁を登って戻ってくる訓練だ。ロープで支える人も重要で、状況を確認し合う隊員たちの声が響く。

 「右手のロープが、降りる速さ。前の命綱と交差して絡まらないよう、ロープを腰に固定してください」。喜多方消防署警防第1係長で訓練の隊長を務める伊藤和司さん(41)からポイントを聞くと、自分の番だ。

 高さ7メートル 「引き揚げ救助」顔こわばる

 隊員が素早くロープで命綱を作って装着。身を乗り出すと、7メートルの高さから見える地面。さすがに恐怖から顔がこわばる。聞いたアドバイスを何度も心の中で唱え、ゆっくり降下していく。

 やみくもに力を入れ、速く降りようとするとバランスが崩れてしまう。仲間との連係の大切さをロープを通して感じながら、何とか着地。今度は逆に登る。ロープで引っ張ってもらうサポートはあるが、自分の体力次第だ。顔をゆがませながらゴールできた。

 これをあんなスピードでやりきるなんて...。心の声が漏れる。次の訓練まで休憩していると、「次はこれに挑戦してみましょう」と伊藤さん。振り向くと、15メートルの高さまで続くはしごを素早く登る隊員の姿が。無事に帰れるのだろうか。

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 勤務態勢と仕事内容

 喜多方地方消防本部は土、日曜日、祝日が休日の毎日勤務と、24時間を交代しながら勤務する交代勤務の二つに分かれる。このうち交代勤務は装備や消防車などを点検した後、訓練に取り組みながら火災や救助現場で活動している。このほか、企業や学校で消火設備の点検などもしている。