患者数増、安直表現に注意

 

 震災後の私たちの健康の状況を知りたいとき、病気の人数が増えた・減ったといった多くの数字が登場します。これらの数字は分かりやすい半面、その意味を知るにはいくつかの注意が必要です。
 前回、病院に新しい医師が赴任すると、それに併せて患者さんがその病院に集まり、結果として地域でその病気が増えたように見えることを紹介しました。

 加えて、医療が進歩すると、患者さんの人数が増えたように見えることもあります。

 例えば、新しい・安全な手術の方法や器具が開発されたとします。すると、これまでは残念ながら手術を受けることができなかった患者さんが、手術を受けられるようになります。検査がより精密にできるようになれば、よりたくさんの患者さんが見つかるようにもなります。

 ほかにも、治療方法の指針(ガイドライン)が改訂されたとしましょう。これまでは、薬を使うことで治療していた患者さんが、手術を受けるようになると、その地域で手術が必要な患者さんが増えているように見えます。

 そのような震災後の医療の進歩によって、患者さんが増えても、それは震災や放射線とはまた別の話です。○○の病気が○○倍に増えた。といったような安直な表現には注意が必要です。