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「愛」と「働く場」重要
造語「ホモ・ラブエンス」 |
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かまた・みのる 東京都出身。東京医科歯科大医学部卒。長野県の諏訪中央病院に赴任し「健康づくり運動」を推進した。チェルノブイリ原発事故の被災者支援やイラクの難民支援にも従事。現在は同病院名誉院長。「がんばらない」(集英社文庫)などベストセラー多数。66歳。
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―近著「1%の力」には「ホモ・ラブエンス」という言葉が出てきます。
「われわれの祖先ホモ・サピエンスは『賢い人』という意味。ホモ・ルーデンスは『遊ぶ人』。人間とは何かと聞かれたら僕は『ホモ・ラブエンス』という造語で答えます。『人間とは愛する生き物である』という意味。それは恋愛であり、親子愛であり、郷土愛。人間とは、愛を知っていて、誰かのために生きられる存在のことです」
―ずっと福島に通い続けて、思うこととは。
「20世紀の精神医学の巨人として知られるフロイトは、人間は死ぬほどの困難に出会った時でも『愛する人』と『働く場』のどちらか一つ残されていれば、大概は死なないと指摘しています。浜通りなどにはいずれも失った被災者がいて、とても大変だと思います」
「一方で、原発事故に伴う賠償金があるため働かなくても生活していけるという状況も生じています。一見良さそうに見えますが、人間は働くことから得るものが大きい。賠償金をもらうのは正当な権利だからたくさんもらうべきですが、フロイトが言うように愛する家族のために働くということはとても重要です」
―働くということは、生きがいを持つということでもあります。
「僕は、今では男女とも平均寿命が日本一になった長野県で、40年間健康づくり運動に取り組んできました。減塩を促したり、野菜摂取量を増やすよう言ったり、体に良い油を薦めてきましたが、最も長寿に影響している要因は何かを科学的に調べたら、それは食生活ではなく、生きがいの有無でした。長野では高齢者の就業率が高く、75歳でも80歳でも、小規模の農業といった何らかの仕事をしています。働いている人たちは生きがいを持ち、生きがいを持っている人は健康で長生きができます」
―健康面では震災、原発事故の子どもたちへの影響を懸念する声もあります。
「外遊びが制限された影響で、福島の子どもたちに肥満が増えました。このまま大人になると、中高年の年代になった時に生活習慣病の増加など、大きな問題になるのではとの心配があります。当面、屋内で飛び回る遊び場を県内に整備していくことは必要でしょう。併せて除染や、放射線量の『見える化』を徹底し、親の自己決定の上で外遊びの場を取り戻していくことが重要ではないでしょうか」
(2014年11月16日 福島民友ニュース)
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( 2014年11月16日付・福島民友新聞掲載 )
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