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復興事業見直しに否定的見解 12市町村長アンケート、縮小模索の政府に警戒感

2025/03/09 09:00

 東京電力福島第1原発事故からの本県復興を支援する国の福島再生加速化交付金などの復興事業を巡り、原発事故で避難指示が出るなどした12市町村の首長の大半が見直しに否定的な見解を示していることが、福島民友新聞社が実施したアンケートで分かった。東日本大震災と原発事故から14年となる中、いまだ復興途上の被災地は復興事業の縮小を模索しようとする政府の動きを警戒。市町村ごとに復興の進展状況が異なる実情を訴え、政府に中長期的な支援を求めていく構えだ。

 12市町村長の回答は【表】の通り。10市町村長が「当面、見直すべきではない」と答えた。「その他」を選んだ川俣町の藤原一二町長も復興事業の見直しに反対した上で「地域の実情に合っていない部分は見直すべきだ」と注文を付けた。

 各市町村長に共通するのは、復興が道半ばにもかかわらず、政府内で進行しつつある風化への強い危機感だ。楢葉町の松本幸英町長は「全国の地方過疎化と横並びで考えられているとしたら全くのお門違いだ」とけん制した。

 帰還困難区域を抱える大熊町の吉田淳町長は原子力災害被災地の特異性に触れ「復興にはまだまだ時間が必要だ」と強調。葛尾村の篠木弘村長は「復興には財源の裏付けが必要だ」とし、浪江町の吉田栄光町長は「大規模で広域な複合災害からの復興は、国の支援なしには実現できない」と国が責任を果たすよう訴えた。

 南相馬市の門馬和夫市長は住民帰還や移住促進に向け、現行の交付金制度では対応できない課題が生じている実情を挙げ「持続可能な自治体運営のためには支援が必要だ」と指摘。田村市の白石高司市長も「(復興の進み具合に応じて)手法と使える範囲の拡大が必要ではないか」と提起した。

 唯一「見直しの必要性は感じているが、時期尚早」と答えた広野町の遠藤智町長も「さまざまな行政課題の解決には長期間を要する」と支援の継続を求めた。

 重要課題 産業・なりわい再生

 12市町村長へのアンケートで「第2期復興・創生期間後」となる2026年度からの5年間で復興へ最も重要な課題を尋ねると「産業・なりわいの再生」が大部分を占めた。「なりわいがない状態では帰還が進まず、移住者も見込めない」(川俣町の藤原一二町長)ため、持続可能な自治体運営を目指し、住民が地域に定着できるよう基盤づくりを重視する姿勢が鮮明になった。

 帰還困難区域を中心に避難指示の解除まで時間がかかった地域では人口が思うように回復していないのが大きな課題だ。双葉町の伊沢史朗町長と富岡町の山本育男町長は「住民帰還」を重点に挙げ、伊沢町長はその前提として「原発の廃炉」と「生活環境の整備」が必要だとの認識を示した。

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