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全首長「教訓や記憶の風化実感」 被災地の現状発信が鍵 12市町村長アンケート

2025/03/11 12:50

 東日本大震災と東京電力福島第1原発事故から14年となるのを前に、福島民友新聞社が原発事故で避難指示が出るなどした12市町村の首長に実施したアンケートでは、全員が「震災と原発事故の教訓や記憶の風化を実感している」との認識で一致し、復興に与えるさまざまな影響を懸念する意見が相次いだ。今なお住民の避難が続き、生活再建も途上の被災地の現状を広く伝えられるか。風化にあらがうには、効果的な情報発信が一層重要になりそうだ。

 「3月11日が近づくといろいろな報道がされるが、それ以外の時期は少なく感じる。阪神大震災と同じ経過をたどっている」。大熊町の吉田淳町長は率直な印象をつづった。

 昨年の能登半島地震など全国で自然災害が多発しており、相対的に本県関連の報道が減ったとみる市町村長もいた。

 震災後に生まれた子どもたちが中学生となり、自治体にも震災対応を経験していない職員が増える中、次世代への教訓と記憶の継承が求められている。楢葉町の松本幸英町長は「経験の語り継ぎの重要度がより増している」と指摘した。

 復興予算の減額や被災自治体に派遣される応援職員の規模縮小など、政府内で風化の影響が出ていることを背景に、富岡町の山本育男町長は「被災地の現状を伝え切れていない」と危機感をにじませた。

 SNSや動画で「幅広く伝える」

 12市町村長へのアンケートでは、風化防止に最も必要な対策を尋ねた。「国内外への情報発信」が半数の6人で、田村市の白石高司市長は「復興へ一歩一歩進んでいる姿と思いを発信することが大事だ」と答えた。

 「その他」を選んだ松本楢葉町長は情報発信の手段にドラマの題材や交流サイト(SNS)、動画投稿サイトの活用を挙げ「世代を問わず、より多くの人に幅広く伝えていくための努力が必要だ」と提唱。南相馬市の門馬和夫市長は、ほかの首長が選んだ四つの選択肢に「地域間交流の推進」も加え、飯舘村の杉岡誠村長は「風化を防ぐ取り組みを国の復興基本方針などに盛り込むべきだ」とした。

 廃炉「評価する」一致

 12市町村長へのアンケートで東京電力による福島第1原発の廃炉に向けた取り組みの評価を質問すると、全員が「評価する」「一定程度評価する」と回答した。

 溶け落ちた核燃料(デブリ)の試験的取り出しに成功するなど、廃炉が新たな段階に入った状況を踏まえた形だが、作業の困難さを理由に「廃炉作業全体のスケジュールが遅延する可能性があり、計画の明確化を図るべきだ」(広野町の遠藤智町長)と注文もあった。

 国と東電への要望は、作業員の被ばく低減策や放射性物質の飛散を防ぐ対策といった「安全な作業」が大半を占めた。「一つの事故やミスが復興の妨げになる」(川内村の遠藤雄幸村長)として、国には東電への指導・監督の徹底を求めた。

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