東日本大震災と東京電力福島第1原発事故から14年の節目を迎えた11日、県内は犠牲者を追悼する静かな祈りに包まれた。巨大な津波に襲われた海岸や各地に設けられた慰霊の場、そして避難先で。関連死も含め県内で4100人以上が犠牲となった震災と原発事故の記憶は今も消えない。
震災発生時刻の午後2時46分、県内の各地で黙とうがささげられた。浪江町の震災遺構「請戸小」では、校舎前の広場に集まった県外の大学生や県内の元教員らが海に向かって手を合わせた。
震災から14年が経過した今なお、原発事故の影響で2万4639人(2月1日現在)の県民が避難生活を続ける。その大部分を占める1万9千人以上が県外に避難する。
長期にわたる避難指示が続いた被災地では、解除後も住民の帰還が十分に進まず、医療や住まいの確保といった生活環境の整備やなりわいの再生など、課題が山積したままだ。根強い風評に加えて、震災の記憶の風化を懸念する声も増えている。
原発事故の除染で出た土壌や廃棄物の県外最終処分の問題は、12日で政府が約束した処分期限まで20年の節目となる。進まぬ再生利用や高まらぬ理解に、中間貯蔵施設の地元では実現への危機感が強まる。
一方、復興も着実に進んでいる。帰還困難区域が残る7市町村のうち4町の特定帰還居住区域では除染や家屋の解体が本格化。第1原発では昨年、事故後初めてとなる溶け落ちた核燃料(デブリ)の取り出しに成功し、廃炉作業が新たな段階に入った。昨年は本県の外国人宿泊者数が過去最高を記録するなど、新たな可能性も見え始めた。
高校生が発信
福島市で開催された県の追悼復興祈念式。高校3校の生徒による献唱に続き、次世代を担う若者の代表として安積高2年の林美月葵(みづき)さん、康(かん)華奈さん、辻本清香(さやか)さんの3人が声を合わせた。「復興が進む今を見つめ、改めて福島は安心・安全であることを発信するとともに、復興の次の担い手として力を発揮する」