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【最終処分まで20年・約束の行方】候補地期限示されず 具体的工程なお不透明

2025/03/13 11:30

県内の除染で出た土壌などが運び込まれた中間貯蔵施設。2、3段が重なる「山」の一つ一つに大量の土壌が保管され、高さは最大15メートルに及ぶ。中央奥は東京電力福島第1原発=昨年12月、双葉町(ドローンで撮影した写真6枚をパノラマ合成)

 環境省は2月、2025年度以降の県外最終処分の工程表を公表し、30年度までに最終処分に関する技術的検討を一定程度完了する方針を示した。一方、最難関とされる処分候補の選定・調査について、具体的な開始時期や期限は盛り込まず、地元が早期明示を求めてきた具体的な工程とは隔たりもあった。

 工程表では技術的な検討内容のほか、処分期限の45年3月まで全国的な理解醸成を継続することを明確にした。一方で候補地選定だけでなく、土壌の再生利用実施など最終処分実現にとって重要な取り組みの時間軸は「不確定要素を含む」(環境省)として曖昧な部分を残した。

 法令で定められた期限まで残り20年。処分場の建設や運搬などを考えれば実現に向けて残された時間は少ないとの指摘も多く、国の調整力が問われる。

 昨年末に閣僚会議

 政府は昨年12月、首相を除く全閣僚で構成する会議を設置し、県外最終処分実現へ戦略的に取り組む態勢を構築した。今春までに県外最終処分の基本方針、夏までに工程表を示す方針だ。

 処分地の選定や再生利用本格化の時間軸を含め、具体的で実現可能性のある道筋を付けられるかが焦点となる。

 IAEAお墨付き

 国際原子力機関(IAEA)は昨年9月、最終処分や再生利用に向けた環境省の計画を「安全基準に合致する」と評価する最終報告書を公表した。国際機関からの安全性への「お墨付き」を得て、国は国内外の理解醸成に生かす。

 報告書には「早い段階からの利害関係者の関与」など政府への提言も盛り込まれた。今年2月に中間貯蔵施設をIAEAのトップとして初めて視察したグロッシ事務局長は、県外最終処分の実現は可能との考えを示した上で「(実現には)一貫した行政の取り組みが必要」と語った。

 処分量は減容化次第 環境省、四つのシナリオ

 環境省は最終処分に向けて、異なる四つの技術シナリオを示した。処分量を減らす「減容化」をどこまで実施するかによって、処分場に必要な面積やコスト、処分物の放射性物質濃度は大きく変わる。

 減容化をしない場合、最終処分量は210万~310万立方メートルで処分場に必要な面積は30~50ヘクタール。サッカー場11面や宿泊施設などを備えたJヴィレッジと同程度の広さが必要となる一方、処分物の濃度は最も低く、減容化の費用も抑えられる。

 ふるい分けや熱処理、洗浄といった減容技術を組み合わせるごとに最終処分量は減少。全ての技術を経た場合、最終処分量は5万~10万立方メートルまで減り、処分場に必要な面積もサッカー場3~4面分(2~3ヘクタール)で足りる。処分物の放射性物質濃度は1キロ当たり最大数千万ベクレルまで上昇し、処理費用も最も高くなる。

 各シナリオは再生利用が順調に進んだ前提で試算されており、流動的な要素を多く含む。4案から絞り込む時期や方法は未定。政府は2025年度以降、必要面積や放射性物質濃度、コストなどの各要素が受け入れにどう影響するか精査する。

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