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意見公募12万件超 除染土再生利用基準、5年前の40~50倍

2025/03/19 08:30

 東京電力福島第1原発事故後の除染で出た土壌の再生利用基準を巡り、環境省が1~2月に実施したパブリックコメント(意見公募)で、寄せられた意見が12万件を超えることが18日、関係者への取材で分かった。5年前に同様の意見公募をした際は2854件で、今回は40~50倍に相当する。内容がほとんど同一の意見も多く、政府は内容を精査している。

 公募期間は1月17日~2月15日で、ウェブサイトと郵送で提出を求めた。関係者によると、意見数はウェブ経由だけで12万件台後半に上る。放射性物質濃度が1キロ当たり8000ベクレル以下の土壌を各地で再生利用する政府方針について、疑問視する内容が多いもようだ。

 基準を定める省令改正は5年前の意見公募で「説明不足」などと反対の声が多く寄せられ、先送りされた経緯がある。その後、環境省は実証事業などで安全性の裏付けを進め、今回の公募は再生利用への市民反応を見極める側面もあった。

 意見が1万件を超えるのは珍しいが、近年は不適切とみられるケースもある。経済産業省が昨年12月に公表したエネルギー基本計画の改定素案に対し、約1カ月間で集まった意見は4万1421件。このうち一定数は、類似内容を大量作成できる生成人工知能(AI)を活用したとみられる意見だった。同計画は原発を最大限活用する方針を含み、一部の市民が印象操作を狙った可能性がある。

 関係者によると、今回の公募でも酷似する意見が多く含まれていた。環境省は今年4月1日に改正省令を施行する方向で調整しており、12万件超の意見に対する考え方を近く公表する。

 改正省令案は、周辺住民が追加で受ける放射線量を国際的に認められる年間1ミリシーベルト以下に抑えられるよう、再生利用基準を定めた。飛散や流出を防ぐため、表面は一般の土などで覆う。放射性セシウムは土に強く吸着されるとして、遮水シートなどは不要と判断した。

 基準案を巡り、国際原子力機関(IAEA)は「安全基準に合致している」と評価する報告書を昨年9月に公表。今年2月には国の原子力規制委員会放射線審議会も「妥当」とする答申をまとめた。

 省令関係とは別に、環境省は2~3月、今後20年間の方向性案についても意見を公募した。

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