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【6月5日付社説】韓国大統領に李氏/未来志向の関係継続を図れ

2025/06/05 08:55

 韓国の大統領選で、革新系政党「共に民主党」前代表の李在明(イジェミョン)氏が、保守系の候補を抑えて当選した。3年ぶりに革新政権への交代となり、李氏の5年間の任期が始まった。政治的に不安定だった国内をまとめ、朝鮮半島や東アジアの平和の実現に向けリーダーシップをとれるかが注目される。

 今回の大統領選は、「非常戒厳」宣言を出した尹錫悦(ユンソンニョル)前大統領が、韓国の憲法裁判所からその手続きを違法と認定され、罷免されたことを受けて実施された。昨年12月の宣言から罷免までの政治的混乱の中で、前大統領を擁護する勢力と野党系を中心とする勢力の対立が激化し、国民を分断するまでに至っていた。

 政権批判の急先鋒(せんぽう)だった李氏は、選挙後に「国民が憎悪ではなく、認め合い共に生きる社会をつくる」「分裂の政治を終わらせる大統領になる」などと国民に訴えた。李氏には国内の保守、革新の両派の融和を図り、安定した政治状況を確立してもらいたい。

 対日政策を巡っては、尹氏が関係の改善を進めてきた。李氏はその姿勢を「屈辱外交」と批判してきたが、大統領就任後の会見で、元徴用工訴訟問題を巡り前政権が日本と合意した、日本企業の賠償支払いを韓国政府傘下の財団に肩代わりさせる解決策を維持する考えを示した。その理由については「国家間の関係は政策の一貫性が特に重要だ」などと述べた。

 韓国は民主主義などの価値観を共有する国で、安全保障面の重要なパートナーである。民間交流も活発で、両国を往来する人の数は年間1200万人を超える。今年は日韓国交正常化から60年の節目に当たり、李氏の発言は両国の関係を冷静に見定めたものと評価できる。日韓両政府には、早期に首脳会談を設定し、未来志向の関係を継続していくことを求めたい。

 大統領選の投票率は、2022年の前回選挙と同様の約8割で、国民の関心が高かったことを示す。ただ、選挙戦では前大統領の「非常戒厳」宣言をどう評価するかが焦点となり、候補者間で激しい言葉の応酬があった半面、その他の政策論議は深まらなかったとの見方がある。そのため、新政権が個別の政策をどのように打ち出すかは見通せない状況だ。

 韓国は東京電力福島第1原発事故後、日本産食品の一部を輸入規制している。本県は全ての水産物に加え、野菜などが規制対象になっている。政府と県は、新政権発足を好機として対話を重ね、科学的根拠に基づかない輸入規制の撤廃を実現してほしい。

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