コメは日本の主食であり、米価の高騰は国民の生活を揺るがす緊急事態だ。政府備蓄米の在庫は底を突きつつあり、対症療法には限界がある。高騰の原因の究明と、国民が安定してコメを食べ続けられる仕組みの構築が急務だ。
米価の高騰を受けて行われた、随意契約による備蓄米の放出により、県内のスーパーでも昨年半ばまでとほぼ同じ水準の5キロ2千円台でコメが販売された。
随意契約により販売価格帯を指定する手法は市場経済への介入にほかならず、本来であれば避けるべきだろう。ただ、コメは昨夏から品薄が続き、価格も倍以上となっている。入札から数日で、昨年前半並みの価格帯で店頭にコメが並び、平均価格がわずかではあるものの低下したことは、緊急の対応として評価できる。
小泉進次郎農相はきのう、備蓄米を追加で計20万トン放出する方針を発表した。放出が完了すれば、備蓄米は残り10万トンとなる。本年産米についても、民間業者などによる数量確保の動きが強まっている。備蓄米放出の選択肢がなくなれば、品不足や高騰を誘発することにもなりかねない。
今後も流通が不安定な状態が続くとの見方が強まれば、米価の動きは流動的にならざるを得ない。重要なのは、政府が今後の米価や凶作への対応について、小泉農相の示唆する輸入米の活用を含めて明確にし、流通が今後安定するとの見通しを市場に示すことだ。
政府は、コメが行き渡らない状況を受け、これまでの生産抑制から増産への転換を打ち出した。閣僚会議で具体的な方向性などを検討する。実質的な減反政策の見直しや、価格変動に応じた生産者の所得補償の是非などが議論される見通しだ。
心配なのは、政府が高騰の原因を把握できていないことだ。昨夏に高騰が始まった当初は、新米の流通が始まり供給量が増えれば、米価が落ち着くとの見通しを示し、効果的な対応を取らなかった。一般競争入札で放出した備蓄米が十分に行き渡らず、高止まりが続いたのも、備蓄米の流通をどう促すかの視点を欠いていたことが招いたとみるべきだろう。
高騰の原因を巡っては、2023年の不作から品不足が連鎖していることや、流通に多くの卸売業者が介在していることを指摘する声がある。仮に流通の仕組みに問題があるのならば、生産量増強や所得補償などだけでは十分ではあるまい。品薄と高騰の原因の詳細な分析を効果的な対策に結び付けられるかが、政府には問われる。