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葛尾移住のパンフルート奏者「自然が豊か、練習も充実」 避難指示解除から9年

2025/06/12 09:50

ヤギのピノと共に暮らす大束さん。「環境に左右されずに演奏できる」と村での生活を語る

 葛尾村は12日、東京電力福島第1原発事故に伴う全村避難を経て、村の大部分の避難指示が解除されてから9年を迎えた。村内居住者473人(1日現在)のうち、解除後の移住者は3割を超える。移住者の一人で、パンフルート奏者の大束晋(すすむ)さん(66)は「自然が豊かで景色も良い。環境に左右されずに思う存分練習もできている」と充実感を漂わせる。

 埼玉県出身。国内ではパンフルートの第一人者として、首都圏を中心に演奏活動をしていたが「自然に囲まれた生活をしたい」との憧れがあった。新型コロナウイルスの感染拡大により演奏機会が減ったことで、本格的に移住を考え、インターネットで全国の空き家を検索。葛尾村の木造平屋の一軒家に目が留まり、2020年11月に住み始めた。

 移住して4年半。自宅ではヤギの「ピノ」と共に暮らす。電気やネット設備はあるがガスはない。敷地内の山で伐採した木をまきにし、風呂をたき、料理をしている。「自然と暮らしていると実感する」。首都圏での演奏活動や教室開催の傍ら、自然豊かな村での生活が何よりの生きる源だ。

 村内のイベントでも演奏しており、お礼に住民から野菜をもらうこともある。「村に友人もできた。いい意味で距離感が程よい」と感じている。

 村はアーティストの移住・定住促進事業に取り組んでおり、画家など音楽とは違った分野の芸術家との交流も深めている。いずれは音楽と美術のどちらも楽しめるイベントの開催も考えている。大束さんは「今を楽しみながら、葛尾のこの土地で生きていきたい」と思い描く。

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