「大小円径各幾何(大円と小円の直径をそれぞれ求めよ)」。幕末から明治期にかけて活躍した和算学者佐久間庸軒の功績を研究する田村市の和算保存会は、庸軒の門下生22人が奉納した日本最大の算額を複製した。今後、算額を見学するツアーや和算を学ぶ講座を企画し、日本独自の数学の魅力に親しんでもらう。
算額とは、数学の問題が解けたことを神仏に感謝し、さらなる勉学の向上を祈願して奉納された数学の絵馬のこと。複製したのは、同市の安倍文殊菩薩堂に1877(明治10)年に奉納されていた算額で、縦約1メートル、横約6メートル。昭和時代以降に復元された算額を除くと日本一の大きさという。
長年雨風にさらされたことで老朽化し、文字や図を読むことができなくなっていた。同保存会の白石岩治さん(75)が算額の複製を作ろうと、メンバーの仲沢市雄さん(64)と共にプロジェクトを始動。市内で水墨画や書の講師を務める鈴木傾樹さん(68)に依頼し、文字を判読しながら仕上げた。
8日に引き渡しが行われ、白石さんは「見ていただいた人が和算に興味を持ってもらい、勉強してみたいと思ってもらえたらうれしい」と話した。算額は市に寄贈される。