福島県双葉町出身の中野文春さん(58)がオーナーを務める焼き肉居酒屋「粋家(すいか)」(いわき市)が20日、同町の地域活動施設「FUTAHOME(ふたほめ)」で水曜日限定のランチ営業を始めた。中野さんは東京電力の元社員で、福島第1原発事故時は緊急作業に対応。その後東電を辞め、いわき市で飲食業を始めたが、離れた故郷への思いは消えなかった。今度は双葉の地で「食を通じて頑張る人の力になりたい」と誓う。
中野さんは同町鴻草出身。小高工高を卒業後の1986年に東電に入社し、第1原発などで放射線管理の仕事をしていた。2011年3月11日も第1原発で働いており、地震の後は免震重要棟で吉田昌郎所長(当時)らと緊急対応に当たったという。
必死の思いで震災から1年間、原発で作業に当たった後に東電を退職。震災前に妻春子さんが浪江町で韓国料理店を営んでいたこともあり、避難先のいわき市で粋家をオープンした。
ただ年々、故郷とのつながりが薄れていくことに、もどかしさを感じていたという。「双葉の復興に少しでも関わりたい」。模索する中で、福島相双復興推進機構の協力もあり、ふたほめ内のチャレンジショップでランチ営業を始めることになった。
中野さんは将来、双葉町内に店を持つことも検討している。「元気なうちに双葉で新たな店をできたらうれしい。地元に恩返しをするため、まずは今できることで頑張る」と意気込む。
売り上げの一部は寄付
メニューは全てセットメニューでサラダとデザート、飲み物が付く。当面は常陸牛カレー(2000円)、牛タンカレー(同)、韓国冷麺(1200円)の3種類を提供していく。売り上げの一部を復興支援として寄付する。営業時間は水曜日午前11時~午後2時。