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除染土の最終処分候補地、35年めどに選定 閣僚会議で工程表決定

2025/08/27 09:40

 東京電力福島第1原発事故に伴う福島県内の除染で出た土壌と廃棄物の県外最終処分を巡り、政府は2035年をめどに処分候補地を選定する方針を固めた。30年ごろに選定に向けた調査などに着手する。26日、首相官邸で関係閣僚会議を開き、最終処分に向けた工程表を決定、候補地選定の時期を明記した。想定通りに候補地が決まれば法定化された45年3月までの最終処分の実現が現実味を増すが、今後10年間で関門となっている必要性や安全性に関する全国的な理解を醸成できるかが焦点となる。

 工程表では、最終処分に向け今後5年程度の政府の取り組みをまとめた。候補地については「おおむね35年をめどに選定を行う」と記載。県や被災市町村は最終処分事業で最難関となる候補地選定を含め重要な時間軸を示すよう強く求めており、政府は「当面5年程度」とした工程表に反映させたとみられる。候補地決定を巡り、環境省が今年2月に示した工程表は「30年ごろ以降」と曖昧で、時期が明示されるのは初めて。

 候補地選定に向け、政府は秋ごろに有識者会議を設置、濃縮して最終処分量を減らす「減容化」の度合いなどに応じた処分に関する選択肢4案について、どの方法が適切なのか検討を本格化させる。最終処分に必要な除染土壌の移送方法や地域共生の在り方についても協議する。成果を踏まえ、35年をめどとした候補地の選定後、用地取得や施設建設を進める方針。

 帰還困難区域を除き県内の除染はほぼ終了し、中間貯蔵施設(大熊町、双葉町)では現時点で土壌や廃棄物計約1410万立方メートルが保管されている。15年から10年間かけて運び込まれた量で、政府内では同施設から全ての土や廃棄物を県外へ搬出するために「10年は必要」との見方が出ている。

 中央省庁9カ所計79立方メートル利用

 工程表では、9月から東京・霞が関の中央省庁9カ所の敷地で土壌の再生利用を進める計画も明記した。環境省によると、使う土の量は計79立方メートルを見込み、花壇や芝生の下に敷くなどして活用する。

 再生利用先を拡大し、東京以外にある府省庁の分庁舎や出先機関でも使う方針。民間企業が行う土地造成などでの利用も想定している。林芳正官房長官は関係閣僚会議で「各府省庁が緊密に連携して取り組みを拡大し、先行事例の創出に向けた検討を」と指示した。

 内堀知事評価「一定の前進」 具体的工程明示求める

 政府が示した除染土壌の県外最終処分と再生利用に関する工程表について内堀雅雄知事は、最終処分の実現に向けた「一定の前進」と評価した。

 ただ、工程表は2030年ごろまでの5年間の具体的取り組みを示す一方、最終処分の期限となる45年3月までの全体像は示さなかった。内堀知事は、候補地選定後の処分場用地取得や建設、運搬などの具体的な手順や日程が明確になっていないとし「国に対して45年3月までの具体的工程を速やかに明示し、政府一丸で最後まで責任を持って対応するよう求める」との考えを示した。

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