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空き家資材「新たな命」 須賀川で実証事業、加工販売や解体費の一助に

2025/08/28 07:30

空き家を視察し、活用できそうな資材を確認する関係者=須賀川市大町

 須賀川市で不動産活用を手がける「テダソチマ」が、空き家から出る資材を再利用して収益化する実証事業に乗り出した。不要な家具や金具、ガラスなどの資材を取り出し、家具やインテリアに加工し販売する。資材の循環を図り、放置された空き家の解消を目指す。

 「このガラスは珍しい」「扉に付いている金具や取っ手がすてき」―。今月上旬、テダソチマの社員や工芸作家らが須賀川市役所に近い築約60年の空き家を訪れ、会話を交わした。歯科医院と住宅を兼ねていたこの空き家は高価とみられる家具などが残る一方、穴の開いた天井から雨水が漏れるなど、老朽化している。「解体は負のイメージがある。残っているものの一部でも別の物に生まれ変わらせ、所有者の気持ちが少しでも前向きなものになるといい」。事業の実施責任者を務める太田里花さん(41)は話す。

 実証事業では、資材の活用を検討するインテリアの専門家や木工雑貨、ガラス分野の作家、建築を専門に学ぶ学生らと連携し、解体前の空き家を訪問。活用できそうなものを確認し、リスト化する。それらを解体時に取り出し、加工して販売する計画だ。実証事業は「”空き家からつなぐ”すかがわ廃材プロジェクト」と銘打ち、国土交通省の「空き家に関連する新たなビジネスモデルの構築」に東北地方で唯一採択された。

 テダソチマは昨年度までの4年間、市から委託を受けて空き家バンクの管理運営に取り組んできた。その中で、解体が必要なのに放置された状態の空き家が多数ある現実に直面。所有者に解体を提案しても、金銭的な理由などから見送られるケースが多かった。そこで負担を少しでも減らし、環境にも優しい取り組みができないかと考え、今回の事業を計画した。

 ただ、事業として軌道に乗せるには、採算面が課題となる。テダソチマによると、解体時に細かい資材などを取り出そうとすると手間がかかるため、費用が通常の2~3倍程度かかるという。今回は2割程度の上乗せを想定してできる範囲で取り組み、その分の費用を補助金や加工した製品の販売益などで賄う方針だが、補助金に頼らない仕組みを確立させなければいけない。実証事業では採算面を含め検討していくことになる。

 それでも「できるところから一歩ずつやっていく」と代表の大木和彦さん(57)。「各専門家や作家らに活躍の場を提供し、須賀川を舞台に”やりたいことに挑戦できる街”として取り組んでいきたい」。社会的な課題となっている空き家問題に正面から向き合っていく。

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