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福島県知事、除染土最終処分の具体的工程を要求 「処分実現、担保にならず」

2025/08/29 09:00

 東京電力福島第1原発事故の除染で出た土壌などの県外最終処分を巡り、内堀雅雄知事は28日、政府が示した工程表について改めて最終処分実現に向けた一定の前進と評価した上で、「国の約束を果たす担保になっていると実感できるまでには至っていない」と述べ、今後も国に対し、より具体的な工程の明示を強く求めていく考えを示した。

 福島市で開かれた福島復興再生協議会後、報道陣の取材に答えた。政府が26日に決定した工程表では、2030年ごろに処分候補地選定に向けた調査に着手し、35年をめどに候補地を選定する方針を明記した。

 秋ごろには新たな有識者会議を設置し、土壌の減容化方法などの検討を本格化させる方針だ。ただ、現時点では重要な処分候補地の選定や土壌の再生利用先確保をどう具体的に進めるかは決まっていない。工程表も今後5年間程度の時間軸を示すにとどまり、法律に明記された45年3月までの最終処分実現の全体像は不透明なままだ。

 内堀知事は、工程表には処分候補地選定後の具体的な工程やスケジュールは明記されなかったと指摘。地元から工程表をできる限り前倒ししてほしいという意見が出ていることや、復興再生協議会の中でも地元自治体や関係団体から45年3月までの具体的工程の明示を求める意見が複数あったとし、「(工程表の)見直しも含め、関係自治体と一緒に環境省と協議を続けていきたい」と語った。

予算確保へ7項目要請

 内堀雅雄知事は福島復興再生協議会で、第3期復興・創生期間(2026~30年度)の初年度となる26年度の政府予算の概算要求に向け、7項目を要請した。政府が掲げる20年代の希望者全員の帰還を実現するため、東京電力福島第1原発事故に伴う避難地域の復興・再生や、避難者らの生活再建といった取り組みを加速させるよう求めた。

 主な要請項目は【表】の通り。避難地域の復興・再生では、帰還困難区域に設けられた「特定帰還居住区域」の早期の避難指示解除に向けた取り組みや、避難指示解除後の拠点づくりへの支援を訴えた。生活再建については、双葉地域の中核的病院の整備や人材確保に必要な予算の確保などを要望した。

 政府は「第3期」の5年間で、本県の復興予算として1兆6千億円程度を確保する方針を示している。ただ、各年度の予算額や事業内容は明示されていない。

 内堀知事は取材に対し、第3期の5年間について「希望者全員が古里に帰ることができるよう政府が取り組む重要な期間。各年度でどのように予算化し、事業を進めていくかが非常に重要だ」と強調した。

 一方、伊藤忠彦復興相は、26年度予算の概算要求に向け「双葉地域の中核的病院の整備、営農再開、企業誘致の支援など必要な事業を着実に実施できる内容にしたい」との考えを示した。

 協議会には小泉進次郎農相、武藤容治経済産業相、浅尾慶一郎環境相も出席した。

 「環境相は最終処分応援を」

 東京電力福島第1原発事故の除染で出た土壌などの県外最終処分を巡り、伊藤忠彦復興相は28日、福島市で開かれた福島復興再生協議会で、中間貯蔵施設が立地する大熊町の吉田淳町長から、歴代の環境大臣や副大臣、政務官の政務三役経験者に県外最終処分実現の応援団となってほしいと要請を受けたと明らかにした。

 伊藤氏は原発事故後、環境副大臣を2期務めたほか、出席していた小泉進次郎農相も環境相経験者。冒頭以外、非公開で開かれた協議会の中で伊藤氏は、小泉氏と共に要請に対して「お応えしていく」と応じたという。伊藤氏は協議会後、報道陣の取材に「県民の皆さまが互いに助け合いながら厳しい道を切り開いてくれた。私たちも責任を持って対応していかなければならない」と語った。

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