豊田通商子会社で風力発電大手のユーラスエナジーホールディングス(東京)が、鹿児島県・大隅半島で計画していた大型風力発電所の建設事業を中断したことが16日、分かった。資材価格などの上昇で採算確保が困難となったとしている。想定区域の約8割が鹿児島大の演習林(同県垂水市)と重なり、大学側が建設を受け入れない方針を同社に伝えていた。
政府は風力や太陽光などの再生可能エネルギーの拡大を進めているが、開発による生態系の破壊など環境への影響が各地で問題となっている。加えて大型風力は資材高騰により撤退を迫られる例も出ており、政府が目指す再生エネの主力電源化は難しさを増している。
ユーラス社は高隈演習林や周辺で、最大32基(総出力19万2千キロワット)の風車の建設を計画。2026年着工、29年運転開始を目指していた。演習林は生態系や林学の研究、教育の場として利用しており、鹿児島大は23年12月、「研究教育に支障を及ぼす可能性がある」として建設拒否を伝達。ユーラス社は規模縮小など計画見直しを迫られていた。