今年2月に右肩の「外傷性肩関節不安定症」による手術を受け、リハビリに励んできたRIZIN LASTMAN STANDING王者の平本蓮。この夏には東京都渋谷区に念願だった自身のジム「STILL THE GOAT」も完成させ、SNSでは右手でパンチを打つ動画も公開するなど、復帰へ向けて本格的に動き出した。
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ファイターとしての姿をまだ見ることはできないが、アンチも納得するほどの知識と視点を持つ“格闘技分析家”としての話を聞くため、オリコンニュースは久々にインタビューを実施。約1時間にもわたり熱く語ってくれた言葉をできるだけ細部までお届けするため前後編に分けて掲載する。
Part.1では出来たばかりのジムに込めたこだわり、自身の復帰への道のり、『RIZIN.51』で冨澤大智と対戦する弟の平本丈の仕上がりや、梅野源治と対戦する“盟友”芦澤竜誠へのエール、そして平本蓮が考える“プロ格闘家として稼ぐ”ことの重要性など、たっぷりと語ってもらった。
■ついに完成した新ジムで見据える将来「日本のSBGにしたい」
――新しいジムの完成おめでとうございます!1階にケージやサンドバッグ、2階は広々としたマットスペースという素晴らしい施設ですね。
【平本】ありがとうございます。10月6日に本格オープン予定で、一般会員の方も募集します。どんなクラスを用意するか去年からずっと考えてきました。知名度があるファイターがジムを作ると広告的な意味でインパクトがあって浸透しやすいけど、クラスの中身が微妙だったらしょうもないし、そんなジムにはしたくない。僕目当てでたくさんのファンの人が来てくれるのもうれしいですけど、自分のファンじゃなくても「ちょっと格闘技をやってみたい」っていう人が入ってくれて、格闘技をやる楽しさを知って、見るのもハマってくれるようになる、そんなキッカケになれたらいいですね。場所は千駄ヶ谷と北参道の中間くらいなので、近所に住んでいて「運動不足を解消したい」くらいの人たちにたくさん来ていただけたら、うれしいです。
――ケージやマットスペース以外の内装など、細かいところまで平本選手のこだわりを込めて作られていますね。
【平本】フロアが広い場所を都内で探すのがけっこう難しくて時間がかかってしまったのですが、元々は銀行が入っていたこの場所を友だちの内装業者の人に作ってもらいました。天井の高さはすごく大事なのでこだわった点です。昼はプロ選手が練習して、夜は一般クラスのボクシングやキックボクシング、MMA、グラップリングなど幅広くやって、僕も一緒に参加してやったり。ここを日本のSBG(元UFC二階級王者コナー・マクレガーのジム。平本も昨年出稽古に行った)みたいにしたいし、自分がマクレガーみたいに活躍して、どんどんデカくしてそのうちビル全部をジムにしたいです(笑)。
――どんなプロ選手がここで練習しているのでしょうか?
【平本】剛毅會の練習もやるし、自分のコーチの大塚隆史さんが教えてる選手、例えばこの前のDEEPフェザー級トーナメントで優勝した水野新太くんをはじめ、軽い階級からライト級くらいまで人数が多くなってきました。最近はボクシングやキックの選手から「MMAやってみたい」とか、大学生のレスリング選手からも「練習させてください」ってすごい連絡がくるんで、いろんな交流をしながらいいチームワークでやっていきたいです。大塚さんと僕のファイトスタイルの考え方がめっちゃ相性がいいので、一緒に相談しながら選択肢を考えていきたいし、自分もかなり進化できているので早く試合で体現したい。楽しみですけど、アンチは別に楽しみにしなくてもいいですよ、僕が勝手にやるだけなんで。
――ケガで試合ができないのに、SNSでは「早く試合しろ」というアンチの声も多いです。
【平本】別に見なくていいし、「試合しろ」じゃなくて「試合してください」だろ。自分が好きでやってるだけですから、僕のファンだけ応援してくれればいいし、それ以外は見なくていいからって感じなんで。もちろん、自分も試合ができないもどかしさはあります。2月に手術をして、先日に半年検診で手術してくだった先生に診てもらって「手術から復帰まで1年くらいかかるものだから」と言われて。時間がかかってしまうけど、長い人生のここで無理しても仕方ないし、他人のペースに合わせて人生を進めて行こうと思っていないんで、マイペースで行きます。
■弟・丈の成長に太鼓判「前戦より圧倒的に強い」自分が大事にする”プロ格闘家”としてのこだわり
――間近に迫ってきた名古屋大会『RIZIN.51』(IGアリーナ)についても聞かせてください。まず、冨澤大智選手と対戦する弟の平本丈選手について、仕上がり具合はいかがでしょうか?
【平本】簡単に言えば、前戦(5月『RIZIN男祭り』田丸辰戦)より圧倒的に強いです。あの試合までは“自分の弟”って感じでちょっと心配な部分もあったので、兄として守りつつ人生をいい方向に進めてあげたいって感じだったんですけど、あの試合から意識が変わって、それを維持したまま今回の試合に向けてやってきました。技術的な部分はもちろん、(胸を叩いて)ここが全然レベルが違うので、練習の姿勢も無口で貪欲にやるようになって。会見とか公開練習に行かなかったら「プロの仕事としてどうなんだ」みたいなことを言われたけど(笑)、仕事というのは、お金が発生することですから。
――平本選手の“プロ論”ですね。
【平本】自分の試合ができない時にちょっと考えたんですよ、キックボクサーがなんで稼げないのに「仕事」としてこんなに頑張ってるのかって。稼げないならボクシングとかMMAをやればいいのに、なんで淡々とずっとキックを続けていくのか。これって“習い事マジック”なんですよ。俺もそうでしたけど、子どもの頃からずっと練習して週末に試合をやって、大人になったら学校に行かなくなっただけで相変わらず練習と試合の繰り返しで、生活が変わらない。子どもの頃はアマチュアの試合にお金を払って出場してるけど、大人になってプロになったら10~20万のファイトマネーをもらえるから、それで満足しちゃうんです。それってプロじゃなくてアマチュアの延長だから、やってる意味あるの?格闘技をやめて普通の仕事をしたほうがいいじゃん、これじゃまともな人生を送れないと思って、自分はキックを辞めたんで。プロ格闘家を名乗るなら、そういう意識を持たないとダメですよ。プロとは何か、ファイトマネーを稼ぐにはどうするか、それを考えていったことで、俺も高額納税するくらい稼ぐようになったわけですから。
――先日SNSで確定申告税額を公開して、衝撃の金額がSNSで大きな話題になりましたね。
【平本】この稼ぎはファイトマネーだけですからね。RIZINファイターで金持ちアピールしてるヤツがいっぱいいますけど、大体がファイトマネーじゃなくてスポンサー費です。スポンサーの金で「稼いでます」とか「キャバクラ最高」とか言ってるヤツがいっぱいいますけど、ファイトマネー1本で勝負してるのはRIZINだと俺と朝倉未来以外は絶対にいないです。スポンサーに世話になるって、普通のサラリーマンがペコペコ頭を下げてるのと変わらないじゃないですか。本当に勝負して、ファイトマネーだけで生活していることに俺は誇りがあるんですよ。スポンサーで稼ぐこともできるけど、自分の中の“プロ”の考えを大事にしたいというか。丈の試合から関係ない話になっちゃいましたけど、最近インタビューされることがなかったので話したいことがいっぱいありすぎて(笑)。
■冨澤大智は「その辺の格闘家と違う嗅覚はある」型がないからこそ打撃の荒さを警戒
――試合前だとなかなか聞くことができない貴重な話です。
【平本】そういった意味で、丈はようやくプロ格闘家という意識のフェーズに入ってきました。試合に全集中してそれ以外のものは全部切り捨てて、公開練習に行かなくてもジムの練習でやることをやってるので、リングで見せるだけです。だって、シェイドゥラエフだってコレスニックだって公開練習に来てないじゃないですか。ガジャマドフだって来てないし、文句言うなら出場選手全員に言えよって話ですから。ただ、そういうプロモーションにちゃんと参加する選手は健気で素晴らしいなと思いますし、これからも頑張ってほしいとは思います。
――ちなみに、冨澤大智選手のファイターとしての評価は?
【平本】冨澤選手もキックだけじゃダメだと思っていろいろ意識を変えてやってきて、今はRIZINに継続参戦するファイターになったので、そういった部分でその辺の格闘家と違う嗅覚はあると思います。「このままじゃダメだ」って気づくのは本当に大事なんで。それって、冨澤くんがジュニアから積み上げてきた選手じゃないからできる部分なのかな。
――冨澤選手は高校まで野球をやっていて、21歳から格闘技を始めました。
【平本】小さい頃からやってるとジムの会長とか親がマネージメントしてて、子どもが「こういうのをやりたい」って主張しても、「ダメだよ」って言いなりになる子が多くて、そういう人たちってかわいそうだなって。田丸辰選手はジュニアからキックを死に物狂いでやってきて、基本に忠実で型が染み付いているから、新しくMMAをやるにはその型を1回崩さないといけないから時間がかかるんですよ、3年とか5年とか。
――平本選手も立ち技からの転向で経験されたことですね。
【平本】そうですね。自分も少し前までは相手のテイクダウンに合わせてどう攻撃するか、という感じだったんですけど、今はテイクに来たら切ればいいし、自分の強みをぶつけるだけっていう自信がありますけど、そうなるまでに時間がめっちゃかかる。そういう意味では、冨澤って型がなくて荒さが武器になる打撃なので、MMAの試合においては厄介ですよね。ずっとMMAをやり続けたら、将来的には田丸選手のほうが確実に素晴らしい選手になるだろうけど、現時点でMMAに適応してるのは冨澤になる。MMAで勝ってるのが(三浦)孝太との試合しかないので、判断材料が少ないのも難しいですけどね。
――MMAキャリアが少ないからこそ実力が見えにくい、と。
【平本】だからこそ、より警戒しなければいけない試合ではあるんですけど、丈の次の相手として冨澤を狙おうってチームで話して準備をしてきました。元々は『超RIZIN.4』でオファーをもらったけど決まらず、9月の名古屋にスライドした感じで、これはいい流れで僕たちも願ったりかなったりです。ファイトキャンプの質で言えば、新しいジムができたから圧倒的な量で上質の練習にフォーカスする感じでやってきたので、あんまり試合前に話し過ぎても良くないですけど。僕はセコンドとして相手のセコンドの上田貴央をイジるくらいですね(笑)。丈はRIZINでYUSHI、田丸くん、冨澤とファイターズフローと3連戦ですから。
■盟友・芦澤竜誠は「鋭い打撃KO勝ちするんじゃないかな」韓国で感じた疑問とは…?
――同大会では平本選手と親交のある芦澤竜誠選手が、梅野源治選手と対戦します。
【平本】竜誠くんのMMAの打撃ってストーンってまっすぐ刺すような鋭い攻撃で、梅野さんに相性が悪いと思うから、竜誠くんがKO勝ちするんじゃないかな。梅野さんは首相撲の展開から膝と肘で削って、しつこくやって乳酸を溜めさせたところを倒して上を取るMMAの勝負をやってくると思うけど、MMAでキックボクサー対決って打撃で先を取ろうっていう意識がないと負けるんですよ。(超RIZIN.3の)YA-MANと怪物くんの試合とか、キックボクサー同士で先に組みを選択したほうが大体負けるイメージで。自分がYA-MANとやった時も打撃で制してから崩そうって作戦だったし、最初から組みに行くと不慣れなんでうまくいかない。竜誠くんの作戦は変わらないと思うからテイクにいくことはないだろうし、逆に梅野さんは大雅戦でテイクダウンして安定して戦える自信がついて、MMAの選択肢が多いんですけど、選択肢が狭いからこそ竜誠くんが自分の強みを集中してぶつける試合になるんじゃないかな。
――梅野さんは冨澤選手と同じファイターズフローで練習しています。
【平本】あそこでいい練習ができてるのかな。RIZIN韓国大会で日本人選手が同じ控室で、僕は中原由貴さんのセコンドで行ってたんですけど、(三浦)孝太のセコンドの上田貴央のアップ内容が謎すぎたんですよ。普通バックをとったら自分の足を相手の足の内側に入れてコントロールするのが基本なんですけど、孝太は足を入れずに相手の上に乗ってるだけで。大塚(隆史)さんと丈と一緒に見てたけど、何がしたいのか分からなくて。
――後ろに乗っかるだけだと、横に落とされてしまうのでは?
【平本】実際に試合でその体勢になって、そのまま落とされて結局は負けちゃったのを目の当たりにしました。上田貴央がセコンドについて強い選手って、神龍誠とか元谷友貴さんみたいに元から強い人以外は見たことがなくて。だからこそ冨澤が怖いんですけど、丈が実力で潰します(笑)。
※後半はシェイドゥラエフvs.コレスニックのフェザー級タイトルマッチ、その勝者と大みそかに対戦予定の朝倉未来、ボクシング世界4団体統一スーパーバンタム級王者の井上尚弥、そして野杁正明へのリベンジのためONEに参戦する安保瑠輝也など、さまざまなことを語った。
《STILL THE GOATオープンキャンペーン》
10月6日のグランドオープンを記念して、オープン日まで入会金無料キャンペーンを実施中。詳細はジムの公式X(@still_h_goat)にて。
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2025/09/24 22:02
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