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メガソーラーに住民複雑 福島・先達山、30日から事業開始

2025/09/23 07:30

太陽光パネルが設置された福島市の先達山。街中からでも山肌が露出した状況が分かる

 福島市西部の吾妻山の麓にある先達山に設置された大規模太陽光発電施設(メガソーラー)を巡り、「パネルがまぶしい」など、市民生活に影響が出ているとして、複数の住民団体が懸念を強めている。複数回にわたって事業者側との対話などに臨んできたが、十分な理解には至っていない。事業者側との溝は埋まらないまま、売電開始予定の30日を迎える可能性が高まっている。

 「工事が完了しても問題はある。あの景色を認めるわけにはいかない」。22日に福島市で記者会見を開いた住民団体「吾妻山の景観と自然環境を守る会」の矢吹武会長らが語気を強めた。

 設置現場は現在、工事の影響で街中からでも山肌が露出した状況が分かるようになっている。同会は事業者が現場の眺望変化予測に基づいて作成した画像と、現状に隔たりがあると指摘。事業者が市に提出した書類に虚偽の情報が含まれているとして、市景観条例に「適合する」とした市の通知を取り消すよう求めていた。同会によると、市は隔たりを認めつつも「虚偽の届け出を行う意思があったと断定することは困難」と回答したという。

 ただ、市は「(緑化に努めるとした)予測と同様の景観に回復させるよう事業者に求めていく」としている。加えてこの日の市議会で、景観条例に基づく完了届け出を事業者から受け取らないことを求める同会の請願が採択された。矢吹会長は「景観に関する主張が尊重された」と話す。

 業者「緑化の改善に努める」

 景観悪化のほか、県や市には「パネルが反射してまぶしい」「運転に支障が出る」といった相談が寄せられている。事業を管理するAmp(アンプ)社(東京都)は5月に住民団体「先達山を注視する会(先注会)」が開いた対話会で、専門業者によるパネル反射の検証を約束。「景色が悪くなっていることは申し訳ない」などと述べた。

 先注会代表の松谷基和東北学院大教授は取材に対し「事業者には誠実な対応をしてほしい。売電が開始した後も(景観などの)問題を追及していきたい」という考えを示した。

 事業では山を造成し、約60ヘクタールの敷地に約9万5000枚のパネルを設置。年間約1万6000世帯分の電力消費量相当を発電する計画になっている。アンプ社が出資して事業を進めるAC7合同会社は公式サイトで、緑化に関して「2024年春から夏以降に徐々に始まっており、年月を経るごとにさらに改善される見込み」と説明。「景観を改善するように努力する」としている。

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