新型コロナウイルスワクチンについて。その2

 

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 みなさんの笑顔と元気をサポートする「健康ジャーナル」。公立藤田総合病院(国見町)副院長で脳神経外科医の佐藤晶宏先生のお話です。
新型コロナウイルスワクチンについて2
公立藤田総合病院
佐藤昌宏先生
福島県立医科大学医学部大学院卒、医学博士号を取得。同大学附属病院から総合南東北病院、福島赤十字病院、原町市立病院等にて勤務し1996(平成8)年4月から公立藤田総合病院脳神経外科、2008年4月より同病院副院長。専門は脳血管障害の診断と外科治療。日本脳神経外科学会専門医・指導医、福島県立医科大学医学部臨床教授。
 
 

 今回も脳卒中のお話はお休みして、新型コロナウイルスワクチンの続きについてお話します。

 1.アナフィラキシー

 前回お話したように、ワクチンの有効率は95%と極めて高い発症予防効果や重症化予防効果がありますが、ワクチンを接種した後、アナフィラキシーという副反応が非常にまれですが起こることがあります。
 日本アレルギー学会の定義によると、アナフィラキシーとは「アレルゲン等の侵入により、複数臓器に全身性にアレルギー症状が惹起(ひきおこす)され、生命に危険を与えうる過敏反応」とあります。
 つまりアナフィラキシーとは、身体の2つ以上の場所に症状がでるものをいいます。例えば、「発疹、かゆみ、皮膚が赤くなるなどの皮膚症状」「息切れ、せき、呼吸が荒くなるなどの呼吸器症状」「唇、舌、眼瞼(まぶた)が腫れるなどの粘膜症状」「血圧低下、倒れる、意識を失うなどの全身症状」が、2つ以上の部位に現れることです。
 しかし、ファイザー社の新型コロナウイルスワクチンの副反応について、日本では厚生労働省専門家部会で4月23日、アナフィラキシー反応は100万回あたり、46人と公表しました。米国のデータよりは多いですが、決して頻度の高いものではありません。これらの症状はワクチンを接種して数分から15分以内に出現しますので、接種後15分間は休んで様子を見ることになっています。
 以前に重いアレルギー反応を起こしたことがある方は、30分間休んで経過をみます。また、万が一症状が出ても、適切な治療を施せば、重症化することはなく、回復可能ですので、過度に恐れる必要はありません。

 2.ワクチン接種不適当者

 ファイザー新型コロナウイルスワクチンの接種不適当者として挙げられているのは以下の方です。
①明らかに発熱している人
②重篤な急性疾患にかかっていることが明らかな人
③本剤の成分に対し重度の過敏症の既往歴のある人(「重度の過敏症」に該当するのは、全身性の皮膚・粘膜症状、喘鳴(異常な呼吸音)、呼吸困難、頻脈、血圧低下等のアナフィラキシーを疑わせる複数の症状が出ている場合です)
④上記のほか、予防接種を行うことが不適当な状態にある人
 ③以外は一時的な接種の延期でよく、時期を見計らって接種は可能となります。

 3.ワクチンに注意を必要とする人

 下記の方は、ワクチン接種に当たって注意が必要であり、かかりつけ医と相談してください。
①過去に免疫不全の診断を受けた人や、近親者に先天性免疫不全の方がいる人
②心臓、腎臓、肝臓、血液疾患や発育障害などの基礎疾患がある人
③過去に予防接種を受けて、接種後2日以内に発熱や全身性の発疹などのアレルギーが疑われる症状が出た人
④過去にけいれんを起こしたことがある人
⑤ワクチンの成分に対して、アレルギーがおこる恐れがある人
 また、このワクチンは筋肉注射なので、抗血栓療法を受けている人、血小板減少症や凝固障害のある方は、接種後の出血に注意が必要です。

 4.ワクチンによる副反応

 前回もお話したように、どのようなワクチンでも必ずといってよいほど何らかの副反応があります。これはワクチンが免疫をつけるための反応を起こすために生じます。新型コロナウイルスワクチンでは接種部の痛み、発熱、頭痛、全身倦怠感(だるさ)の頻度が多いようですが、治療を要したり、障害が残ったりするような副反応は極めてまれです。2回目の接種で副反応の頻度は高くなるようです。もし、健康被害が万が一起きた場合には救済制度の対象になります。また、高齢者は若者に比べ、副反応は出にくいことが分かっています。

 5.ワクチン接種の優先順位

 日本政府は、まず、新型コロナウイルス感染症患者等に直接医療を提供する医療従事者、統計学的に重症化率や死亡率が高い65歳以上の高齢者、基礎疾患のある人を優先に接種するとしています。その次に、高齢者が入居・居住する高齢者福祉施設で働く職員が対象となる予定です。
 本県でも、医療従事者、高齢者、高齢者福祉施設で働く職員の接種が始まりました。その後は16歳以上の一般の方に順次接種が行われていきます。妊娠を考えている方や妊娠中の方、授乳中の方、新型コロナウイルスに感染したことがある方も、ワクチンを受けることができます。これらの方は基礎疾患のある方も含め、かかりつけ医などの医療機関に相談することをお勧めします。

 6.ワクチン接種の時期

 ワクチンの接種時期は令和4年2月末までの予定になっています。ファイザー社のワクチン接種は通常2回必要で、1回目の接種の3週間後に2回目を接種します。接種は完全公費、無料ですので、ワクチンを語ったなりすまし詐欺に気を付けてください。

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 次回も新型コロナウイルスワクチンについてのさまざまな疑問に対してお話をする予定です。

月号より