新型コロナウイルスワクチンについて。その3

 

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 みなさんの笑顔と元気をサポートする「健康ジャーナル」。公立藤田総合病院(国見町)副院長で脳神経外科医の佐藤晶宏先生のお話です。
新型コロナウイルスワクチンについて3
公立藤田総合病院
佐藤昌宏先生
福島県立医科大学医学部大学院卒、医学博士号を取得。同大学附属病院から総合南東北病院、福島赤十字病院、原町市立病院等にて勤務し1996(平成8)年4月から公立藤田総合病院脳神経外科、2008年4月より同病院副院長。専門は脳血管障害の診断と外科治療。日本脳神経外科学会専門医・指導医、福島県立医科大学医学部臨床教授。
 
 

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 今回も脳卒中の話はお休みして、新型コロナウイルスワクチンについて、厚生労働省からの記事を参考にしてお話します。

 1.薬事承認され、予防接種法に基づいて接種できるワクチン

 国内でのワクチンは前回までお話したファイザー社に加えて、5月21日に武田/モデルナ社製が薬事承認されました。ファイザー社のワクチンと武田/モデルナ社製のワクチンはともにメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンです。これらは、新型コロナウイルスを構成するタンパク質の設計図となるmRNAが脂質に包まれたワクチンです。作用機序はおおむね同じで、有効性、安全性も似ています。

 接種対象者はファイザー社のワクチンは以前16歳以上でしたが、12歳以上まで引き下げられました。武田/モデルナ社製は18歳以上です。投与量はファイザー社のワクチンが0・3mlに対して、武田/モデルナ社製は0・5mlで、ファイザー社は3週間の間隔をおくのに対して、武田/モデルナ社製は4週間の間隔をおき、ともに2回の接種が必要です。

 また、作用機序の違うアストラゼネカ社のワクチンも薬事承認されましたが、国内ではまだ接種されず、台湾に124万回分が無償で供与され、台湾政府から感謝されたとの報道がありました。

 2.有効性

 前回、ファイザー社のワクチンの有効率は95%とお話をしました。武田/モデルナ社製も有効率は94%とされています。では、ワクチンを接種すれば新型コロナウイルスに感染しなくなるのでしょうか。残念ながら、接種しても発症した例はあるようです。また、ワクチンを接種しても、免疫がつくまでには1~2週間程度の時間がかかり、免疫がついても発症予防効果は100%ではありません。

 さらにワクチンの効果がいつまで持続するのかについても、実はまだわかっていません。ワクチン効果の持続性はウイルスの種類により異なります。麻疹、風疹に対する免疫は数十年続きますが、新型コロナウイルスに関しては、国外でもワクチン接種が始まって1年弱ですので、データが無く、まだはっきりしたことが言えないのが実情です。ファイザー社の発表をみると、1年間は十分にもつものと思われ、状況によっては追加接種が必要になるかもしれません。1年なのか、2年なのか、半永久的に効果が持続するのか、これからデータが出てくると思われます。

 年齢による有効性の違いについては、従来、通常のワクチンは一般的に高齢者が若い方に比べて有効性が低いといわれていますが、新型コロナウイルスワクチンは大規模臨床試験やイスラエルの実社会でも65歳以上の高齢者で90%以上の発症予防効果があることが報告されています。

 3.変異株への有効性

 1年半前に中国で最初に見つかった従来型の新型コロナウイルスが変異して、イギリス型、南アフリカ型、ブラジル型、さらにはインド型といった変異株が見つかっています。これらの変異株ウイルスは従来型ウイルスより、感染力が高いという報告があり、また基礎疾患のない若年者でも重症化する傾向がみられています。一般論としてウイルスは絶えず変異を起こしていくのが普通で、小さな変異でワクチンの効果がなくなるというわけではありません。ファイザー社や武田/モデルナ社製のワクチンでは、イギリス型、南アフリカ型、ブラジル型の変異株の新型コロナウイルスにも抗体が作られたという実験結果が発表されています。

 また、昨年末から今年にかけて変異株ウイルスが広がり、感染者や死者が爆発的に増加した英国やイスラエルでは、国民の多くがワクチンを接種したことにより、感染の収束に持ち込んだことも報告されており、これらの変異株に関しては有効である可能性が高いとされています。しかし、インド型変異株については未だ、未知数であり、徐々に増加していることもあり警戒が必要です。今後、ワクチンの変異株に対する有効性、安全性などが発表されてくると思われます。

 4.今後の課題

 世界で最も感染者が多かったアメリカでは、いち早くワクチンが接種されて、感染者が減少し社会活動、経済活動が戻りつつあります。日本の今後については、ワクチンを国民のどれぐらいが接種を希望し、実際に接種するかが課題です。ワクチン接種することで個人が感染発症を抑え、さらには集団免疫が付いて、発症数が減少すれば社会活動も元に戻ることが期待されます。

 一方、日本では一部でワクチンに対する不信感が根強く存在しています。接種率をいかに上げるかが、感染を収束する鍵になると思われます。そのためには、各自治体と医師、看護師、薬剤師などが強力に連携して、接種がスムーズに行われるような体制作りが必要です。

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 次回も新型コロナウイルスワクチンについてお話します。

月号より