脳卒中について。その46 【第6のリスク・コレステロール】

 
公立藤田総合病院・佐藤昌宏 福島県立医科大学医学部大学院卒業、医学博士号を取得。同大学附属病院から総合南東北病院、福島赤十字病院、原町市立病院等にて勤務し1996(平成8)年4月から公立藤田総合病院脳神経外科。2008年4月より同病院副院長。専門は脳血管障害の診断と外科治療。日本脳神経外科学会専門医・指導医、福島県立医科大学医学部臨床教授

 今回は脂質異常症や高血圧、糖尿病が原因でおこる動脈硬化の治療についてお話をする予定でしたが、その前に動脈硬化の検査についてお話しします。動脈硬化とは、血管が硬くなり弾力性が失われた状態のことを指します。脳梗塞(こうそく)や心筋梗塞などの原因になります。

 1.頸(けい)動脈エコー検査(超音波検査)

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 頸動脈エコー検査は超音波装置を使用して前頸部にゼリーを塗ったプローベという器具を密着させて、脳に向かう頸動脈を観察します(図1㊧)。粥(じゅく)状動脈硬化が進行してくるとプラーク(コレステロールの塊)と呼ばれる物質が動脈の内膜に貯留するため、動脈が狭くなっている様子が確認できます。検査自体は痛みはなく、非常に簡単にできるので、医療機関では動脈硬化検査で、多くの場合初期に行うことができます。

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 図2ではプラークがあるため動脈壁が厚くなり、動脈内腔が狭くなっているのが分かります。赤い部分が血流を表しています。プラークの成分によりプラークの一部が剥がれて、脳動脈に飛んでいき、脳動脈が閉塞して脳梗塞になることがあったり、プラークが肥大化して血液の流れが悪くなり、脳梗塞になったりすることがあります。心臓の筋肉に血液を送っている血管にもプラークができて狭心症や心筋梗塞の原因になります。頸動脈の状態が全身の血管の状態を反映しているとされているため、有用な検査です。

 2.CAVI、ABI検査

 冠動脈が詰まることによる心臓や血管の病気の早期発見につながるのが、CAVI検査です。CAVIとは、心臓(Cardio)から足首(Ankle)までの動脈(Vascular)の硬さの指標(Index)の略で、まさに動脈の硬さの指標です。CAVIは、普段の血圧に関係なく、心臓から足首までの動脈の硬さなどを数値で評価することができます。

 CAVIの測定をするときは、ベッドに仰向けに寝て、両腕、両足首にカフを、胸元に心音マイクをつけ、血圧と、脈波を測定します(図1㊨)。CAVIは、血液が流れるときのポンプの内側の圧力(血圧)の変化をみて、血液を送り出すポンプ機能が十分に働いているか、つまり動脈が硬くなっていないかどうかをみます。CAVIの値が8・0未満は正常範囲ですが、8・0~9・0は境界域で、9・0より高いと動脈硬化が進んでいるといえます。

 同じ性別、同年齢の健康な人のCAVI検査の平均値と比べることで、血管年齢が分かります。動脈硬化は加齢もリスク因子の一つです。CAVIの値が9・0未満であっても、血管年齢が高い人は、同じ年齢の人に比べて動脈硬化の進行が早いと考えられます。
 ABI検査は、上腕の血圧と足首の血圧を測定しその比を計算します。正常な場合、足の血圧は上腕よりも「高く」なります。足首の血圧が低く、ABIの値が正常の比より低い場合、脚の血管が狭く血流が悪くなっていると考えられ、下肢の末梢(まっしょう)動脈疾患(閉塞性動脈硬化症)という病気である可能性があります。

 3.血液検査

◦LDL-C(悪玉コレステロール)
◦HDL-C(善玉コレステロール)
◦TG(中性脂肪)
◦血糖
◦HbA1c(ヘモグロビンA1c)
などを調べます。いずれも動脈硬化に関連した因子で、LDL-C、TGや血糖などが高い人ほど、動脈硬化になりやすくなります。

 4.動脈硬化の検査を受けるタイミング、勧められる人

 動脈硬化の危険に気付くためには、健康診断を毎年受けて、自分が危険因子を持っているかどうかをチェックすることが大切です。そして、以下の項目にあてはまる人は、定期的に医療機関で検査を受けることが勧められます。

◦脂質異常、高血圧、糖尿病、喫煙、慢性腎臓病などの危険因子が多い
◦運動時に胸痛などがある
◦狭心症、心筋梗塞や下肢の閉塞性動脈硬化症をすでに起こしている
◦一過性脳虚血発作(TIA)や脳卒中をすでに起こしている

 検査を通して動脈硬化が進行していることが分かった場合は、生活習慣の改善や継続的に治療を行って、心筋梗塞や脳梗塞になるリスクを減らしていくことが大切です。

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 次回は動脈硬化の治療についてお話します。