最近、書店で本を買いましたか? 実は今、県内では約半数の市町村に書店が1店舗もない状況です。お住まいの地域はいかがですか。今回は、そんな書店と本の今を深掘りします。
催し、食品販売も
まずは、岩瀬書店八木田店(福島市)店長の小林和浩さんに「町の本屋さん」(大型書店)の現状を聞いた。
同店は6月に改装し、イベントスペースや全国各地の食品を集めたショップが新設された。児童書のコーナーも刷新し、改装後は「女性客とファミリー層が増えた」(小林さん)。
だが一方で「書店業界は市場規模が縮小しているのが如実に分かる」(同)とも。インターネット通販の普及や、雑誌の休廃刊が相次いでいる影響が大きいという。そのためには「店で買う楽しさ」を提供し続けなければならない。小林さんは「書店は時代に合わせて変わっていかなければいけない」と策を練る。
同店ではイベントスペースを利用して、期間限定のセレクトショップなどを展開している。品ぞろえの変化や催事で、行くたびに新しい何かがある、客を飽きさせない工夫を心がけているという。
店頭で欲しい本が見つからず、取り寄せを頼んだ経験がある人も多いと思うが、取り寄せも進化している。「以前は店に届くまで1~2週間かかることもあったが、今は最短で2日程度で入荷します。見つからないときは遠慮なく書店員に声をかけてほしい」と小林さん。問い合わせから、話題の本を知ることも多いという。「お客さまからの『この本ありますか?』という声は、私たちにとって貴重な情報源です」
書店の存在意義について「地域に貢献する居心地の良い場所というコンセプトで店を改装した。外から店内が見える明るく開放的な空間をつくり、店内にはお客さんがくつろげる椅子を置くなどした。地域の人に愛される書店をつくっていきたい」と語った。
小型店の目利き
次に、新刊本のほか古本も扱う福島市の本屋コトウの店主、小島雄次さんに聞いた。
小島さんは店の存在を「大型店あっての自分たち小型店」と強調する。「大型店は雑誌から専門書まで全方位型の品ぞろえができる。自分たちは、個人出版の本など大型店が扱わない『隙間』を埋めている」 書店がない市町村が増えている現状については「人口や学校の数などから考えると、書店を維持するのが難しい地域があるのは仕方がないかもしれない。書店の形態にとらわれず、他の業種の店や施設が書籍を販売してもいいのでは」と提案する。
同店は、小島さんの目利きで選んだ品ぞろえも特徴の一つだ。「社会情勢などに合わせ、今必要な本を提案できる場所でもあると思っている。例えば今なら戦争や平和のこと、ジェンダーやフェミニズムなど。誰に届いていつ芽が出るか分からないけれど、種まきをしている気分です」
店は29日から県庁通り沿いに場所を移す。移転先は周囲にメガネ店や中古レコード店、文具店など、新旧の個性的な商店が集まる注目のエリアだ。まちづくりの中での書店の存在について聞くと「本屋は文化を引っ張る存在になれるのでは」と小島さん。理由は「どんなジャンルでもそれに関する書籍があるから、書籍を通してどの分野ともつながることができる。書店は街の文化のハブ(複数のものを接続する中継装置)的な役割になれると思う」。新天地への期待とともに、本と書店の可能性を語った。
次回は本を中心にしたまちづくりやイベントを紹介します。(佐藤香)