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【7月19日付社説】参院選・あす投票/国の方向示す論戦を尽くせ

2025/07/19 08:08

 猛暑の中で行われてきた選挙戦が、残り1日となった。今回の参院選は、衆院で与党が少数のため、結果次第で政権の枠組みの変化が生じる事実上の政権選択選挙となった。各党や候補者には最後までの政策論争、有権者にはあすの投票に向けて一票を託す先を冷静に吟味することが求められる。

 福島選挙区では、自民党の現職、立憲民主党、参政党、諸派、無所属の新人4人の計5人が立候補し、改選の1議席を争い論戦を繰り広げている。福島民友新聞社と読売新聞社が共同で実施した世論調査では、有権者が投票先を判断する際に重視すると答えたのは景気や物価高対策だった。年金などの社会保障、「政治とカネ」への関心も高い傾向にあった。

 各候補者は、街頭演説や遊説で景気や物価高対策などの課題について解決策を訴えることはできたか。本県が直面する震災復興や人口減少の問題を巡り、確かな見解を示しただろうか。福島選挙区の当選者は今後6年間、県民の代弁者となる。有権者は、具体的な政策を訴え続けた候補者は誰かを見極めることが重要だ。

 選挙区に加え、各党は比例の議席の獲得を目指した舌戦も繰り広げている。党の政策を訴えるだけではなく、他党の政策や姿勢を批判することで、支持を獲得しようとする言動も出ている。それらは政党の情報発信に加え、第三者の交流サイト(SNS)や「切り取り動画」でも拡散される。

 衆院選や東京都知事選などでは、ネットの情報が有権者の投票行動に大きな影響を与えた。ただ、ネットで流れる情報には、事実誤認や根拠のない内容などが含まれている可能性がある。有権者は、公的な機関の発表やデータなどを踏まえながら、正しい情報に基づいて政党を選択することを心がけなければならない。

 作家らでつくる日本ペンクラブは、参院選期間中に外国人に対する差別的な主張や「外国人犯罪が増えている」などのデマが拡散されていることを批判する声明を発表した。声明では「与野党を問わず、一部の政党が外国人の排斥を競い合う状況が生まれている」とも指摘している。

 政策の本質は、社会課題の構造を分析し、法制度を改善して解決を目指していくことにある。課題の原因を何らかの「敵」に見いだして排除を主張することは、少数意見を尊重しながら合意形成を進める民主主義とは相いれない。政党の主張の根底にある、社会への向き合い方についても目を凝らしてほしい。

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