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【9月10日付社説】いわき市長に内田氏/住みよいまちへ施策強化を

2025/09/10 08:10

 任期満了に伴ういわき市長選は、現職の内田広之氏が、新人と元職の2人を退けて再選を果たした。市政の継続を求める声が反映されたとみられるが、投票率は過去最低の41.84%だった。多くの市民の共感を得ながら、持続可能なまちづくりを進めていく行政手腕が問われている。

 内田氏は選挙戦を通じて、地域医療の充実を重点的に訴えてきた。いわき市の人口10万人当たりの医師数は県平均よりも少なく、同市を含む全国62の中核市の平均と比べると約6割にとどまっている。診療科や病状によっては、県外の医療機関を利用せざるを得ないケースも出ている。

 福島民友新聞社の出口調査では、回答者の4割超が市長選で最も重視する政策として「医療・福祉の充実」を挙げるなど、市民の関心も高い。2期目の任期中には、市内の医療人材を最大限に生かすような医療機関の連携をさらに深めながら、県や福島医大などの協力を得るなどして着実に医師の確保を進めることが重要だ。

 いわき市のこの4年間の出来事を振り返ると、国連の人材育成機関が運営する研修センターの誘致が決まった。インフラ関係では、JRいわき駅前の再開発が完了し、小名浜港と常磐道を結ぶ自動車専用道路「小名浜道路」が開通した。民間では、サッカーJ2いわきFCを運営するいわきスポーツクラブが、小名浜港に新スタジアムを建設する計画を発表した。

 内田氏は、小中学校給食の完全無償化や学力向上につながる学校教育の充実、若者の働く場としての企業誘致などを2期目の目標に掲げた。行政が単独でできる取り組みに加え、積極的な支援策でインフラの整備効果や民間の活力を最大限に引き出し、子育てしやすく、若者が地元に定着する環境を整えてもらいたい。

 いわき市では2年前、県内で初めて線状降水帯が発生し甚大な被害が出た。気候変動による水害リスクが高止まりする中、河川改修などのハード面の整備を待つだけでは不十分だ。緊急時の迅速な避難誘導や地区内の公共施設を活用した垂直避難の推進など、県内自治体をリードするような防災力の強化を実現することを求めたい。

 今年6月には水道局の公共工事を巡る官製談合事件が明らかになり、職員が逮捕、起訴された。また、市教委が2023年に学校でのいじめを把握していながら、十分な対応をしていなかった問題も発覚した。内田氏には、職員の綱紀粛正と再発防止策を徹底することで、市民の信頼に応えてほしい。

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