注文と違っても「ま、いっか」と大目に見てください―。世界アルツハイマーデーの21日、認知症への理解推進を目的に福島県福島市や須賀川市で、認知症高齢者が飲食店を舞台に接客するイベントが開かれた。
丁寧に配膳「緊張した」 福島
福島市では、大戸屋ごはん処福島北矢野目店に認知症の高齢者が接客担当として働く「ばぁばとじぃじのごはん処」が一日限定で開店した。
一般社団法人「CARNIVAL WORKS(カーニバルワークス、郡山市)」などでつくる実行委員会が主催し、県北の80~90代約20人が参加。制服に身を包んだ高齢者は、7種類の定食メニューから客の注文を聞き取り、ご飯やみそ汁、漬物などと一緒に丁寧に配膳した。来店した客と触れ合う高齢者は生き生きした表情を見せた。
接客した伊達市の高齢者(89)は「緊張したが喜んでもらえて良かった。昔のアルバイト時代を思い出した」とはにかんだ様子で語った。注文通りに料理を受け取った福島市の会社員(46)は「丁寧で素晴らしい接客だった。何より笑顔がすてきで愛情が伝わった」と話した。
「笑顔見るのが楽しい」 須賀川
介護事業所などを運営する須賀川市のNPO法人豊心会は「ハプニングラーメン~まちがいも楽しむラーメン店~」と銘打ち、同市の須賀川牡丹園内の牡丹会館で一日限定のラーメン店を開いた。
ラーメン店は同市の天心須賀川店が協力。参加した“店員”は、同法人の施設を利用する認知症の高齢者らで、60~90代の計28人が客を出迎えて注文を取ったり、料理を運んだりして接客に当たった。来店客は、注文の取り忘れや間違いなどのハプニングを穏やかに見守った。
同法人のスタッフや高校生、大学生らのボランティア約40人が店員をサポート。店員の高齢者(79)は「お客さんの笑顔を見るのが楽しい」と仕事のやりがいに生き生きとした表情を見せた。
同法人によると、この日は111人が来店し、売り上げはイベント運営費や店員の給料に充てるという。