東京電力福島第1原発事故に伴い休校となっている富岡高で毎月第3日曜日、卒業生らが校歌を歌う「母校で校歌を歌い隊」の活動が今月で丸10年を迎える。かつて生徒の笑顔であふれた光景を思いながら、朽ちゆく無人の校舎に校歌を響かせ続けた。今月の活動は19日午前10時からで、広く参加を呼びかけている。
活動の契機は、富岡町の全町避難が続いていた2015年8月。校舎の片付けで東日本大震災時の生徒たちが立ち入った際、生徒たちが校歌を口ずさんで歌の輪が広がったことだ。同行していた元校長の青木淑子さんが生徒の思いに心を打たれ、姿を変えない校歌を歌い継いで学校の記憶を残そうと決意。同窓会などに参加を呼びかけた。
15年10月の初回の活動には10人以上が集まった。以降は同隊が発足し、県内外の参加者が足を運ぶ。17年3月の休校を乗り越え、新型コロナウイルス禍や悪天候にも負けず、活動は途絶えたことはない。青木さんは「何もしなければ富岡高の存在は無になってしまうという危機感がある。10年の節目はみんなで盛り上げたい」と語った。
思い語り合う催しも
19日午後1時からは富岡町の「とみおかアーカイブ・ミュージアム」で富岡高に関する催しが開かれる。「母校で校歌を歌う人たち」をテーマに思いを語り合うほか、活動に関する映像を視聴する。問い合わせは主催のNPO法人富岡町3・11を語る会(電話0240・23・5431)へ。