高市早苗政権が21日、発足した。福島県は物価高や東日本大震災からの復興など、多くの課題に直面する中、県民は少しでも生活が向上することを期待する。
「(高市首相が)自民党総裁に選ばれた時から『女性でもトップに立てるんだ』と思い、政治に関心を持つことができた」。会津若松市のパート従業員の女性(67)は、女性初の首相就任を歓迎する。高市首相はこれまで、経済安全保障担当相などを歴任してきた。「持ち前のリーダーシップを生かして、女性の立場で子育て支援などに取り組んでほしい」と願う。
新政権発足までは、政党間でさまざまな思惑が交錯した。自民の「石破降ろし」、公明党の連立政権離脱、野党の動き、自民と日本維新の会の連立合意…。「政局はあるのだろうが、国民目線でスピード感を持ってほしかった」。社会保険労務士事務所を営む郡山市の男性(49)は残念がる。新政権に求めるのは、これまでのしがらみを断ち切り、日本の成長を導くような役割だ。「政治への不信感払拭(ふっしょく)にも努めてほしい」と強調する。
「物価が高いので、本当になんとかしてほしい」。いわき市の主婦(50)は切実な声を挙げる。夫と2人暮らしも、新米の購入には抵抗があり、備蓄米を少しずつ食べている。移動は車が中心で、給油は月に1、2回ほど。自民と維新の間ではガソリン税の暫定税率廃止を進める方針で「決めるべきことを決められるようにしてほしい」と期待する。
今回の新政権発足の流れを若者はどう見たのか。福島学院大3年の男性(22)=郡山市=は総裁選から状況を注目してきた。「(高市首相から)覚悟を感じ、応援したいと思った」という。ただ、公明の連立離脱などがあり「首相に就任できるか不安になった」と話す。高市首相の手腕に期待し「現役世代に目を向けた施策にも力を入れてほしい」と願った。
同大3年の女性(21)=郡山市=は18歳になってから毎回、投票所へ足を運んでいる。「高市首相からは日本社会を変革するという気合を感じる。現金給付などの短期的な政策ではなく、減税や所得を増やすなど、長期的で継続性のある政策に取り組んでほしい」と訴えた。
被災地、復興加速「一緒に」
東日本大震災や東京電力福島第1原発事故からの復興を担う経済産業相、環境相、復興相の顔触れが変わった。被災地の住民は復興の取り組みが加速することを願う。
「閣僚には双葉郡に足を運んでもらい、この地域をどうしたらいいのか一緒になって考えてほしい」。富岡町商工会長の遠藤一善さん(64)はそう話す。富岡町の居住率は約24%で更地が目立つ。「居住者が少なければ、商業者の生業(なりわい)は成り立たない。実行力のある支援をしてほしい」と訴える。
原発事故により、双葉町の自宅が帰還困難区域にある下長塚行政区長の福田猛雄(たけお)さん(72)=相馬市に避難=は「長期的な視点で復興を進めなければいけない中で、顔を覚えたと思ったら大臣が代わる。内閣に目新しさはあっても、復興への不安は拭えない」と冷静に受け止めた。
大熊町に帰還し、3年目を迎えた町消防団長の宗像宗之さん(72)は「まだまだ町内に雇用が足りない。働く場所がなければ、若い人も帰ってこない。町の将来のためにも雇用を生みだし、帰りたい人が帰ることができる環境整備をしてもらいたい」と求めた。