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【11月6日付社説】いわき信組の不正/反社との関係は言語道断だ

2025/11/06 08:10

 不正融資などでつくられた資金は、反社会的勢力に流出していた。支払いを決断した旧経営陣の責任は当然として、それを止められなかった組織風土の問題が改めて浮き彫りとなった。過去との決別ができない限り、金融機関として存続する資格はない。

 いわき信用組合(いわき市)の不正行為の特別調査委員会が、報告書を発表した。不正融資で捻出した資金のうち使途不明だった約10億円が、旧経営陣から反社会的勢力に提供されていたことが分かった。調査委が資料で裏付けたのは約3・5億円だが、旧経営陣の証言などに基づき、2004~16年の間に不正の口止め料などとして使途不明金に相当する金額が流出したと認定した。

 同信組を巡っては、名義人に承諾を得ずに設置した口座を経由するなどの手口で不正融資を繰り返していたことで、すでに信用は失墜している。ただ、今回発覚した反社会的勢力との関係は別の問題だ。現経営陣は、企業運営の存亡に関わる非常事態にあることを肝に銘じなくてはならない。

 同信組では反社会的勢力に対する基本方針があり、対応マニュアルや取引内規なども設けられていた。しかし、旧経営陣は、ルールに基づいた法的な対抗措置などを取ることなく、不当要求に応じ続けていた。調査委は「どれだけ立派な規定や体制を整備しようとも、経営陣の意識が低ければ、画餅に帰す」と指摘している。

 金成茂理事長は、会見で「誠意を見せて生まれ変わる『いわしん』を見せていく」と述べた。まず行うべきは、金融庁など第三者の管理監督の下、透明性の高い形で反社会的勢力との関係を根絶することだ。過去との決別という意味では、旧経営陣の刑事、民事の両面での責任追及を通じて、法的なけじめをつけることも重要だ。

 調査では、債務者に多めに融資し、その分を現金で戻してもらう「水増し融資」の手口が行われていたことが新たに分かった。また、同信組の内部調査では、旧経営陣が東北財務局などに不祥事について虚偽の報告をし、現金紛失を隠蔽(いんぺい)する指示などが行われていたことも明らかになった。

 金融庁は新たな不祥事の発覚を受け、新規顧客への融資業務の1カ月停止に加え、役職員が一定期間、通常業務から完全に離れて研修を行うことを命じた。同信組の役職員は、利用者の信頼を取り戻す最後の機会と考え、一人一人が金融機関の職員として備えるべき見識を身に付け、不正を許さない組織をつくらなければならない。

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