東日本大震災と原発事故を契機に避難所の在り方は変わりました。ペットの避難については、2013年に環境省が「同行避難」を原則とするガイドラインを示し、制度面の枠組みが整えられてきました。しかし、実際の避難所運営にはなお多くの課題があります。
多くの自治体が防災計画に「ペット同行避難」を盛り込むようになりましたが、避難所にペット用スペースを設けている自治体は半数に届かず、4割程度とされています。設備や物資は十分ではなく、ケージやフード、水、消臭対応などに運営側も苦慮しています。また、避難所スタッフの動物対応経験が乏しいことや、鳴き声・臭気・アレルギー・動物由来感染症といった人への影響も懸念されています。飼い主側でもキャリーや餌・水の備えが不十分な場合が目立ちます。
能登半島地震(24年)では、ペットと共に避難する住民が多く見られ、受け入れに混乱が生じました。一部の避難所では区画を分ける工夫も見られましたが、例外的な対応にとどまっています。
環境省は現在、災害時におけるペット同行避難の指針を8年ぶりに見直す検討会を設けると報じられています。また、同省の「動物適正飼養推進・基盤強化事業」でも、災害時のペット受け入れ態勢の強化が掲げられています。制度と現場の間にある差をどう埋めていくかが、今後の課題です。
