新たな多孔性材料を開発し、ノーベル化学賞の受賞が決まった京都大特別教授の北川進さん(74)。発表当初は「うそつき」呼ばわりまでされたが、事実を積み重ねると論文の引用件数が跳ね上がり、一転脚光を浴びることに。「端っこの学問だった昔を思うと隔世の感。時代に合ってきたのかな」と振り返る。
研究を始めた当初、物質の分離に使われる材料として一般的だったのはゼオライトなどの無機物。軟らかい有機物は使えないというのが常識だった。転機になったのは1989年。当時勤めていた近畿大から学生を連れ、結晶の構造解析に必要な大型計算機を開放していた京大を訪れた時だ。
開発した結晶のデータを入力し、計算が終わるまで2~3時間あった。途中の計算結果を基に構造を予想していると、学生から「穴が開いている」と指摘があった。均等な大きさの穴が蜂の巣のように整然と並ぶ構造を見て、北川さんははっとした。
研究のエッセンスをまとめた論文を発表すると引用回数が一気に増え、世界のトップクラスに躍り出た。