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「化粧品らしくない」黄色で勝負した『メラノCC』、時代が追いついた? 2年連続で販売個数1位のワケ

2025/10/07 15:09

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今でこそ黄色いパッケージはお馴染みの『メラノCC』化粧水

 SNSでよく目にする「成分買い」という言葉。これはスキンケア選びの際に、美容成分に着目する考え方のこと。「成分買い」の浸透で流行しているのが「高濃度」をうたった韓国ほか海外発スキンケア製品で、若年層を中心に中高年層にまで広がりつつある。一方で日本のスキンケア製品が少々押され気味になっている印象もあるが、国産には国産の良さもあるはず。黄色のパッケージでお馴染みの『メラノCC』シリーズを販売するロート製薬に、現状を聞いた。

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■韓国発スキンケア製品が大流行、「濃度が高い」は「効果が高い」は間違い?

 スキンケア製品に配合されている美容成分として、昔からよく知られてきたのはビタミンCやヒアルロン酸、コラーゲンなど。この辺は多くの人に馴染みがあるだろうが、昨今はトラネキサム酸やレチノール、ナイアシンアミド…など、これまであまり聞いたことのなかった成分が「テキメンに効く」とSNSで話題になることも増えた。

 特に話題に上がるのが、美容に熱心な国として知られる韓国発のスキンケア製品だ。これらには特定の成分名を前面に打ち出したものが多く、「成分買い」という消費行動を生み出している。

 『メラノCC』や『肌ラボ』『メンソレータム』といったスキンケアブランドを展開するロート製薬の中谷麻央さんは、「中身にこだわって選ぶのは、自分に合うスキンケアを選びやすくなる側面もありますし、成分へのリテラシーが高まっているのはとてもいいこと」と、こうした風潮をポジティブに捉えているという。

 とはいえ、「成分買い」にも見落としている視点はないか。

 「スキンケアの効果は、成分の組み合わせや処方の設計、そして肌質との相性に左右されます。最近は特定の成分を高濃度に配合したスキンケア製品が注目を集めていますが、濃度が高い=効果が高いとは言い切れません。肌質は人それぞれ違いますし、その人の肌に合った適正な濃度を超えると肌トラブルの原因の1つになることもあります」

 また、スキンケアにもタイパを求める風潮が高まっている一面もあるが…。

 「タイパを打ち出すSNSの宣伝には、“1日で肌が変わる”など即効性を強調したものもあります。また、即効性を実感させるために酸などを多めに配合し、肌表面の角質をはがれやすくするテクニックを使った製品も見受けられます。たしかに短期的には肌がスベスベになるかもしれませんが、日本人には刺激が強すぎることも。四季で気温や湿度が大きく変動する環境から、『日本人の肌は世界で最も敏感』という報告もあります」

 だが、一部の輸入コスメのように“1日で肌が変わる”とか、“高濃度で肌がキレイに”などは良し悪しは別に強烈なアピールでもある。同様にスキンケア商品を扱う身としては、直接的に即効性を訴えたくなることはないのだろうか。日本では薬機法により化粧品広告にも厳しいルールがあるが…。

 「正直、もっとロート製品の良さをお伝えしたいと思うこともありますが(笑)、お客様の肌がルールで守られるというのは素晴らしいことだと思っています。即効性についても、悪いとは言いません。ただ、私たちは製薬会社として培ってきた視点から、肌も今だけキレイになればいいとは考えていなくて。“肌=一生使う臓器”という発想を大切にしています」

■化粧品メーカーとは着眼点が異なる、製薬会社ならではの考え方

 その名の通りロート製薬は製薬会社であり、目薬のイメージが強いかもしれない。一方で、今ではスキンケアも同社の主軸事業となるまでに成長。ドラッグストアにも同社の製品が数多く投入されている。とはいえ、製薬という出自から、一般の化粧品メーカーとはものづくりの着眼点が少々異なるようだ。

 「本格的にスキンケア事業に参入したのは2001年のこと。当時は、様々な成分を配合して世界観を作ったスキンケア製品が主流でした。私たちは医薬品で培った考え方から、スキンケア製品についても薬と同じ発想の作り方──キー成分(最も効果を発揮する成分)をメインに処方設計をするという発想を自然に選びました。結果的にそれが功を奏しました」

 2001年、同社初の機能性化粧品として誕生したピュアビタミンC配合の美容液『オバジ』は、ビタミンCブームの火付け役となり、今なお美容マニアの間で支持されている。実に25年も前から、現在の「成分買い」の発想とマッチしたものづくりをしていたというわけだ。

 「ビタミンCは不安定な成分のため、キー成分として配合するのはとても難しいのですが、医薬品の製剤技術を生かせばチャレンジできるのではないか? と考えたのが、機能性化粧品の原点でした」

 さらに2005年にはより幅広い層に向けたビタミンCスキンケアシリーズ『メラノバスター』を、ドラッグストア市場に投入する。

 「“医薬品発想のスキンケア”として開発した商品で、薬効感を全面に打ち出すべく黒いパッケージに。こちらもユーザー満足度はとても高かったんですが、残念ながら数あるドラコスの中で存在感を発揮するまでには至らず…想定通りにはいかなかったんです(笑)」

 どんなに品質に自信があっても、まずは手に取ってもらえないと始まらない──。製品の特性をわかりやすく的確に伝える試行錯誤の結果、2009年に商品名を『メラノCC』に変更し、パッケージにはビタミンCを連想させる鮮やかな黄色が採用された。

 「決してオシャレなデザインではないですが(笑)、あえて違和感を大切に。当時、“美白なら青、エイジングケアなら赤のパッケージ”が主流で、『黄色は化粧品らしくない』という声もありました。でも、会社のDNAとして何より薬効感を大事にしていて。黄色のパッケージには、そんなアイデンティティも表現されています」

■2年連続で販売個数1位『メラノCC』なぜリニューアル?「より幅広い肌質の方に配慮する責任がある」

 成分(=ビタミンC)にこだわった『メラノCC』シリーズは大ヒットを記録。中でも美容液は大手化粧品メーカーを押さえて、8年連続1位の販売個数を誇る。さらに近年は、2年連続で販売個数1位を記録した化粧水の勢いが目覚ましい。その化粧水がこの8月、大幅リニューアルを行った理由を、中谷さんは次のように語る。

 「もともとビタミンCは、シミのスポットケアに利用されることが多い成分でした。ところが最近はデイリーの全顔ケアとして、ビタミンCを取り入れる方が非常に増えています。『メラノCC』も、かつて以上に多様な肌質の方にご使用いただくようになりました。その中には一部とはいえ、毎日使いするには敏感に感じる肌質の方がいるのも事実です」

 中谷さんは「正直、ビタミンCがここまで幅広く支持されるとは、また『メラノCC』がここまで大きなブランドになるとは想像していなかった」と、『メラノバスター』から始まった20年を振り返る。

 「しかし今は、より幅広い肌質の方に配慮する責任もあります。今回のリニューアルではビタミンC融合体の種類を変更し、より多くの方が肌悩みのない状態が毎日続くことを目指しました」

 そして今、ビタミンC市場は大盛況で、ドラコスからデパコス、韓国系から美容内服薬と群雄割拠の様相を呈している。かつてのように「ビタミンCなら『メラノCC』一択」という状況ではなくなった今、どのように勝負していくのか。

 「私たちは長年にわたって、ビタミンCの中でも最も不安定な“ピュアビタミンC”と呼ばれる成分を研究してきました。これをスキンケア製品にたっぷり配合する技術は、当社独自のもの。比べれば効果の違いは必ず感じていただけるはずですし、たとえ“浮気”をされても(笑)、きっと帰ってきてくださるという自信があります」

 クオリティの高さはもちろん、全国のドラッグストアで買える手軽さとリーズナブルな価格も生活者にとってはありがたいところだ。なぜここまでの安価が実現するのか?

 「生産ロットが大きいため、原材料の仕入れコストを抑えられるなどの強みがあります。また容器を『肌ラボ』シリーズと共通化するなど、必要以上に華美にせず、お客様にお求めやすい価格を維持する工夫。もっとオシャレなデザインにしたいと思ったこともありましたが(笑)、昨今の中身重視の風潮にはマッチしているのかもしれません」

 時代が追いついたというわけだ。

 「私たちはOTC (一般用医薬品)に特化した製薬会社です。つまり一部の人ではなく、あらゆる人に向けて健康を届けたいという考えが根底にあります。同様にスキンケア製品も一部の人ではなく、誰もが手に取りやすい価格にこだわり続けていきたいですね」

 SNSでは様々な輸入コスメが入れ替わり立ち替わりバズっていく。一方で、日本人の肌質に向き合い、研究を重ねて開発された国産コスメが劣るわけでは決してない。いずれにしても、一過性のブームや流行に惑わされることなく、自分の肌質に合う製品を選びたいものだ。

(文:児玉澄子)

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