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“離婚前提”の夫婦の物語から伝えたかった人生の形 『小さい頃は、神様がいて』担当Pが語る制作秘話

2025/11/06 12:05

  • エンタメ総合
フジテレビ木曜劇場『小さい頃は、神様がいて』より (C)フジテレビ

 現在フジテレビで放送中の俳優の北村有起哉が主演、仲間由紀恵が共演する木曜劇場『小さい頃は、神様がいて』(毎週木曜 後10:00)の田淵麻子プロデューサーがこのほど、ドラマの囲み取材に応じ、本作の制作過程や、岡田惠和氏の脚本の持つ魅力について語ってくれた。

【写真】12年ぶりの共演で“夫婦役”を務める北村有起哉&仲間由紀恵

 『最後から二番目の恋』シリーズなどで知られる脚本家・岡田氏の最新作。完全オリジナル脚本となる本作は、2人の子を持つ小倉渉(おぐら・わたる/北村)と、その妻・あん(仲間)を中心に、登場人物たちの人生模様をユーモラスかつ、温かく届けるホームコメディー。

 物語は、19年前、小倉夫婦があることがきっかけで「子どもが二十歳になったら離婚する」という約束を交わすところから始まる。その言葉をすっかり忘れてマイペースに生きてきた夫・渉と、その言葉を心の支えとして過ごしてきた妻・あん。全く異なる想いを抱えた2人の何気ない日常の中で、少しずつ心を揺らしていく姿を、繊細かつ軽やかに描いていく。

――本作はオリジナル脚本ということですが、ドラマの企画意図や岡田さんが脚本を担当された経緯を教えてください。

小さい頃から岡田さんのドラマが大好きで、いつかご一緒したい脚本家さんだと思っていました。大巨匠なので、そんなチャンスはないと思っていたんですが、たまたま大人の離婚話をやりたいと話をしていた時に、岡田さんがやってみたいという話をされているっていうのを聞き、今回ご一緒できるようになりました。最初から(娘が)20歳で離婚する夫婦、離婚前提の夫婦という設定はあったんですけど、そこから3世帯にするといったアイデアは岡田さんからでした。

――岡田さんの脚本の魅力をどう感じていますか?

登場人物がみんな愛らしい。情けない人でも愛すべきというか、嫌いになれない。登場人物全員にそれぞれ愛があるなと思っています。そしてそれは岡田さんの人柄がそうだからだと感じています。私たちの突拍子もない発言も、「なるほど面白いね」と受け入れてくださる。懐の大きさが脚本に表れていると思います。もう一つはセリフ1つ1つの意味の深さだと思います。

――岡田さんとの話し合いの中で生まれたシーンはありますか?

20歳で離婚する設定は前提として決まっていたんですけれども、そのモチベーション、それ以外にどのようにこの作品が何を伝えていくべきかというのは、ある意味テーマでした。

その中で岡田さんが「人間だけなんだよね、孫を見られるの」という話をしていて。そもそも生物学上、孫を見られるのは人間だけであり、そんなに長く結婚生活を営んでいるのって人間だけだみたいな話になり、「確かにそうですよね」って。

そこから、一人の人と添い遂げ続けるってある意味すごいことだと。であれば、それだけじゃない形があってもいいし、結婚したら縛らなきゃいけないとか、子どもが生まれたら縛られなきゃいけないみたいな。どうしても、男女平等と言っても、女性にかかる負荷が大きかったりとか、伝わりきれてなかったりする部分がどうしてもある。でもそこは「問題提起というよりは、そういうこともある。夫婦って、一筋縄ではいかないし、それでも結婚する意味ってなんだろうと。一方で、結婚しない人生は肯定されるべきだし、いろいろな形を肯定できたらいいと、じっくりと話し合いましたね。

――離婚を考えている夫婦、同性カップル、熟年夫婦の3世帯を軸とした作品にした狙いを教えてください。

当初はもう少し年齢が近い3世帯を考えたのですが、価値観が同じになってしまうかなと。岡田さんもお孫さんをときどき預かっているそうで、私も子どもがいるのですが働いている時に、どうしても実家の親に頼っている部分が多くて。最近は共働きのお母さんって、保育園に預けつつも、助けてもらえる家族がないと回らない家族もいるのでは?という話になり、そうした世帯も描きたいと。

であれば、年齢も離して、その結婚という形ではないけど、結婚と変わらない思いを持っている人たちのことも描いていくべきだと、この形に決まりました。

――なぜ、離婚の設定を前提とされたのでしょうか?

夫婦の形は一つではないということを描きたかったんです。結婚って時間も縛られるし、お金も縛られる。自由も減るのに、結婚する意味ってなんだろうかと。それは先にある楽しさ、結婚を経ないと得られないもの。でも逆に結婚を経たからこそ失うものもあるのではないかと。その中で離婚がゴールをという設定というより、その先までをちゃんと描きたいと思い、タイムリミットを設定したという流れです。

――それぞれのキャラクター設定の着想を教えてください。

離婚前提、そしてそれを切り出すのは女性というのは決まっていました。ただそうなった時に、わがままなだけの女性には見せたくなくて、またイラッとするんだけど、愛くるしい、愛すべき主人公という、絶妙なラインを描きたいと思っていました。

また岡田さんは当て書きなので、ちゃんと台本になったのはキャスティングが決まってからなんですね。なんとなくざっくりとしたコンセプトはあったんですけど、台本にしていく過程は、岡田さんが北村有起哉さんと仲間由紀恵さんが決まってから、イメージも含め作っていきました。

――撮影現場の雰囲気を教えてください。

現場の裏も皆さん仲が良いです。前室でもみんなで喋っていることが多いんですけど、それはやっぱり北村さんの優しいお人柄と、あと“なおしほ”(小野花梨、石井杏奈)が元気なので(笑)。有起哉さんも2人にいじられながら、楽しそうに話をしています。また仲間さんが現場を大きく包み込んでいて、ほほ笑ましい雰囲気を作ってくれていますね。

――本作を通じて視聴者に伝えたいことはありますか?

大それた何かをというよりは、人ってみんな違って、みんな良くて、みんな愛すべき存在ということを伝えたいというのが1番のテーマです。題材は離婚、家族の話ではあるけれども、それに縛られることはなく、人のそれぞれのかわいらしさとかユーモアさ、ちょっと切ないこともありながら、みんな生きている。誰かの心に寄り添えたらいいなと思っています。

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