2000年3月8日に発生した営団地下鉄(現:東京メトロ)日比谷線中目黒駅構内脱線衝突事故で命を落とした高校生に、20年の時を経て一通の手紙が届いた――その実話をもとにした映画『人はなぜラブレターを書くのか』が、来年(2026年)4月17日に公開される。監督・脚本・編集は『舟を編む』『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』などで知られる石井裕也。主人公・寺田ナズナを綾瀬はるかが演じる。石井監督とは初のタッグとなる。
【動画】綾瀬はるかはじめ主なキャストが登場する予告編
事故で亡くなったのは、進学校に通いながらボクシングにも打ち込んでいた17歳の少年・富久信介さん。一方、彼と毎朝同じ時間、同じ車両に乗り、想いを寄せていた少女がいた。
通学電車の中だけで会える、話したことも、名前も知らない彼。そんないつもの朝に起こった地下鉄脱線事故。たまたま、いつもと違う時間の電車に乗ってしまった信介さんは、事故に巻き込まれてしまう。少女は事故のニュースとともに、彼の悲報と名前を知ることになった。
20年後の2020年、富久さんが通っていた大橋ボクシングジムの大橋秀行会長のもとに見知らぬ女性から手紙が届きた。差出人は当時、信介さんに想いを寄せていたあの少女だった。手紙には彼への想いや通学時の思い出が綴られていた。そして、手紙は富久さんの家族の元に届けられた。
この奇跡の物語は、スポーツ報知が記事で紹介し、日本テレビ『ザ!世界仰天ニュース』でも“奇跡の物語”として再現映像が放送され、多くの反響を呼んだ。石井監督は記事を目にしてすぐに企画を構想したといい、「みんなの思いや力が奇跡的に混ざり合って、結果的にすごい映画が完成しました」と手応えを語る。
映画で綾瀬が演じる主人公・寺田ナズナは、夫と娘と暮らしながら定食屋を切り盛りする女性。ある出来事をきっかけに24年前の初恋を思い返し、手紙を書き始める。
24年前の学生時代のナズナを演じるのは、當真あみ。信介役には『町田くんの世界』で注目された細田佳央太が起用され、実在の人物を演じるために徹底した肉体づくりをして、今作の撮影に挑んだ。
信介が通うボクシングジムの先輩・川嶋勝重役には、石井組初参加の菅田将暉。実在する元WBC世界スーパーフライ級王者である川嶋を演じるため、菅田もボクシングジムに通い、『あゝ、荒野』から7年ぶりにボクサーを演じた。
ナズナの夫役には、数々の石井監督作品に出演し、監督が絶大な信頼を寄せる妻夫木聡。綾瀬とは2008年の『ザ・マジックアワー』ぶりの共演となり、初の夫婦役となる。妻への愛情を持ちながらも無骨にしかふるまえない夫・良一を静かに熱く演じる。
そして、信介の父・富久隆治役には、妻夫木同様、石井監督作品に欠かせない佐藤浩市。最愛の一人息子を不慮の事故で失った絶望、時を経て初めて知ることができた息子の知らない一面への戸惑いなど、複雑な父親の心情を丁寧に体現した。
石井監督は「綾瀬さんはもちろんですが、映画を観終える頃には當真さん、細田君、妻夫木さん、菅田くん、浩市さん、誰もが主役に見えると思います」と自信を覗かせている。
あわせて公開された予告映像では、現在のナズナ(綾瀬)が、若き日の自分(當真)と信介との記憶をたどり、初恋の痛みと温かさを手紙にしたためる姿が映し出される。突然訪れる事故、そして24年ぶりに届いた手紙が導く“奇跡”。映像の最後にナズナ(綾瀬)が見せる涙の意味とは――。なぜ彼女はラブレターを書いたのか―。
■営団地下鉄日比谷線中目黒駅構内列車脱線衝突事故とは
2000年(平成12年)3月8日午前9時1分頃、帝都高速度交通営団(現:東京メトロ)日比谷線において、恵比寿駅から中目黒駅に入線しようとしていた列車がカーブで脱線し、対向列車と衝突した鉄道事故。死者5名、負傷者64名(2000年10月26日付の事故調査検討会報告書では63名)を出した。その後、東京メトロは、平成28年4月に実車を走行する実地訓練が可能な「総合研修訓練センター」を江東区新木場に開所するなど安全意識の徹底に努めている。
■寺田ナズナ役:綾瀬はるかのコメント
脚本を読んだ時に涙が止まらなくて、心が揺さぶられました。
生きたい、もっと見てたい、家族を愛して、家族に愛されて、生きてきた証のような思いの中で、初恋の人に24年越しのラブレターを書いたのかもしれません。
ナズナのラブレターに秘められた物語をぜひ観ていただきたいです。
■学生時代のナズナ役:當真あみのコメント
脚本を読んで、初めてこの出来事が実際にあった事なのだと知りました。
友人と過ごしたり、何かに熱中したり、恋をしたりと当たり前に思っていた日常を、しっかりと見つめて大切にしたいと感じました。
綾瀬さんが演じるナズナと、どう繋げられたらいいかを監督と話しながら、ナズナが経験し積み重ねた感情を作っていけるように演じました。
この作品をたくさんの方に見ていただきたいです。映画を見た時、きっと自分の日常が愛おしく大切に思えるはずです。
■富久信介役:細田佳央太のコメント
石井監督ともう一度ご一緒することを目標にしていたので、自ずと気合いが入りました。ボクシング練習には約4ヶ月という準備期間をいただいて、ボクシング未経験の僕に松浦さん(ボクシング指導者)をはじめとした多くの方々が指導してくださり向き合っていただきました。素敵過ぎるスタッフ・キャストの皆様に囲まれた撮影の日々は、映画と芝居にもう一段と深くのめり込むきっかけとなり、撮影の内外問わず役と同様に温かい距離を保ち続けてくださった菅田さんには感謝してもしきれません。この作品が持つ記憶と、そこに生きた人々の熱が、現代に生きる皆様と未来に届くことを願ってやみません。
■川嶋勝重役:菅田将暉のコメント
第17代WBC世界スーパーフライ級チャンピオン川嶋勝重選手。を演じる?即お断りしようと思いました。が、台本を読むと、早すぎる命と対話する真摯な青年の姿がありました。夢について語り合い、想いを背負って闘う。今日のために生きる。今の自分に必要な作品だったのか、使命感のようなものが湧いてきて、初の石井組に挑みました。ハードな撮影でしたが、一生に一度の経験をさせてもらいました。思いやりと少しシャイなところがこの映画の好きなところです。ぜひ、観に来てください。
■寺田良一役:妻夫木聡のコメント
さまざまなテーマで挑戦し続ける石井監督の作品に呼んでもらえることはとても光栄なことです。そして、自分にとっても新しい一面を見せられるようにと身が引き締まる思いでしたが、少しずつほどけていく家族の形を、一日一日確かめながら撮影する日々は、どうしようなく不器用で、素直になれないけど、それがとても愛おしい時間でした。
過去を生きる人、今を生きる人、みんなの想いが溢れている。悲しみさえも糧にして、前を向き、それぞれが夢に向かって踏み出していく様に涙が止まりませんでした。
一つのラブレターによって、止まっていた時間が動きだしていく。悲しいことも、嬉しいことも、みんな手を繋いで生きていければ良いよねって思わせてくれる、そんな素敵な映画です。是非劇場でご覧ください。
■富久隆治役:佐藤浩市のコメント
突然の別れと、覚悟を持って向き合う別れ。
どちらにしても後悔なく大切な人を見送ることの出来る方はごく僅か…。
しかしその想いが、より深く故人との歴史を刻んでくれると信じたい。
綾瀬はるか主演、石井裕也監督『人はなぜラブレターを書くのか』日比谷線脱線衝突事故の実話を映画化
2025/12/05 07:30
- 映画
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