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【Answers/事例紹介】次世代アイスリンクのスタンダードモデルとして10年前に始動。『埼玉アイスアリーナ』で紡ぐエコアリーナの未来。【前川製作所】

2025/10/29 13:10

  • 前川製作所
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前川製作所
省エネルギー性や環境に配慮をした通年型アイスリンク、「エコアリーナ」




 株式会社前川製作所(東京都江東区、代表取締役 社長執行役員:前川 真、以下「マエカワ」)は、株式会社パティネレジャー様(本社:東京都豊島区、代表取締役:小林 一志)が運営する通年型アイスリンク「埼玉アイスアリーナ」における導入事例を、同社公式サイト内の事例紹介コンテンツ「Mayekawa Answers」にて、2025年10月29日(水)に公開したことをお知らせいたします。
 本事例では、マエカワの高効率自然冷媒冷凍機「NewTon(ニュートン)」及び、CO2ヒートポンプ式デシカント除湿機「chris(クリス)」の導入背景や効果について詳しく紹介しています。

「Mayekawa Answers」とは、マエカワが提供する導入事例のコンテンツシリーズです。お客様が設備導入に際して抱えていた課題に対し、マエカワがどのような技術やソリューションでお応えしたかを「マエカワの応え=Answer」としてご紹介しています。加えて、お客様の事業内容や MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)、モノづくりへのこだわり、そしてその取り組みがどのように社会に貢献しているのかにも焦点を当て、ストーリー性のある記事として発信しています。
概要
株式会社パティネレジャー様は50年近くにわたり全国の様々なスケートリンクの運営管理のトップランナー企業として活躍しておられる、『氷のプロフェッショナル集団』です。
長年の経験で培ったノウハウを活かし、スケートリンクの「設計・設営・管理・運営」までトータルなサポートを行っておられ、常設のリンクのみならず、特設リンクによる競技大会やアイスショー、冬季限定の屋外リンクなど幅広いジャンルやコンセプトのスケートリンクを企画・提供することで、競技からレジャーまで様々な人々がアイススケートを楽しむためのフィールドを拡げていらっしゃいます。
また、ここ十数年は、マエカワと共に省エネルギー性や環境に配慮をした通年型アイスリンク、「エコアリーナ」の提案を推進いただいております。
冷却設備として、マエカワのアイスリンク製氷向け高効率自然冷媒冷凍機「NewTon S」が採用されたエコアリーナは、2025年2月現在、全国5ヶ所に展開されています。

2024年に創業10周年を迎えた埼玉アイスアリーナ

今回、ご紹介させていただく埼玉アイスアリーナ様は、パティネレジャー様による運営管理が行われている、兵庫県の「ひょうご西宮アイスアリーナ」様、新潟県の「MGC三菱ガス化学アイスアリーナ」様に続く、3ヶ所目のアイスアリーナとして2014年にオープンした、エコアリーナです。
オリンピックサイズ(30m×60m)の本格的なアイスホッケー仕様のメインリンクとカーリングシートのあるサブリンクという2種類のリンクを持つこのアイスアリーナには「NewTon S」以外にも、CO2ヒートポンプ式デシカント除湿機「chris(クリス)」をご採用いただきました。
竣工時の内覧会で、当時の支配人が口にした「次世代アイスリンクのスタンダードモデルが完成した」「今後はこのスタイルを『エコアリーナ』の標準モデルとしたい」という言葉や思想がこの10年の間にどのような展開を遂げたのか、マエカワが納入した設備の現況、そのほかアイススケート業界の未来についてなど、現在の支配人である江田様にお話を伺いました。
建物の設計から冷却設備まで。海外からも注目される「環境にやさしい」を追求した次世代のアイスリンク
--まず、埼玉アイスアリーナ様で実現されている「エコアリーナ」について詳しく教えて頂けますでしょうか?
江田:エコアリーナは、パティネレジャーが運営する、冷却設備だけではなく建物、照明、空調も環境にやさしい製品や技術を用いて構成されたアイスリンクの総称です。ここ、埼玉アイスアリーナの例で言えば、製氷設備や場内の除湿に自然冷媒機器を採用し、屋根全体に1,680枚の太陽光パネルを敷き詰めて、電気を作りつつ外側から遮熱する作りになっています。

屋根に敷き詰められた太陽光パネル。年間の電気代の半分を補填しているほか、売電収入も得られている。

また、ここ以降に建てられたエコアリーナは全て、天井にシーリング加工を施して冷凍機の負荷を軽減させています。

ーー建物の断熱はアイスアリーナにとってかなり重要な要素だということですね。
江田:そうですね。去年の夏場に視察で船橋市のアイスリンク(三井不動産アイスパーク船橋/2020年完成)に行ったときに驚いたのですが、埼玉アイスアリーナだとその時期の場内温度は大体5℃とか6℃くらいなのに、船橋では暖房をかけていて場内の温度が15℃~16℃くらいで、ものすごく快適でした。場内を暖めると天井と氷周りの温度の差が出てしまって結露しやすくなるので、温度管理がなかなか難しいのですが、船橋は外からの熱が入りにくい構造になっているから、そういった温度の差がなくて、むしろ場内の温度を安定させるために暖房をかけている。天井シーリングの効果を実感したので、埼玉アイスアリーナでも導入を検討しているところです。

ーーNewTonやchrisといった製品やマエカワの技術は「エコアリーナ」にどのように寄与しているのでしょうか?
江田:まずは省エネルギー性の高い自然冷媒機器であるということ。国内に最盛期は500ヶ所以上あったアイスリンクは維持管理費用の問題から次々と閉鎖しており、現在国内で稼働しているアイスリンク場の数は150~170程度と1/3程度に減ってしまいました。ランニングコスト、特に電気料金の負担が大きくなってしまったことが原因ですが、製氷の要である冷凍機に使われていたフロン冷媒が2020年に日本国内での生産・消費が停止されたことも大きな要因です。しかし、NewTonやchrisといった自然冷媒を使った機器であればこの先も規制される可能性は低いですし、NewTonの省エネルギー性は西宮や新潟で実証されています。実際、西宮と新潟で導入されたNewTonの台数は3台ですが、埼玉アイスアリーナへの導入数は2台。もちろん、安全を見込んで補助用の冷却機器は置いていますが、設置場所や配管の素材を見直すことで冷却効率を高めた結果、1台減らしても問題なく運用できると判断された結果だと聞いています。

アイスホッケー仕様のメインリンク

サブリンク

ーー稼働当初は海外のアイススケート業界の方も視察に訪れたことがあると聞きました。
江田:北米のスケート事業に関わる方々が日本のアイスアリーナの省エネルギーシステムの視察ということで、訪問されたことがこれまでに4回ほどありました。NHL(ナショナルホッケーリーグ、北米のプロアイスホッケーリーグ)所属チームオーナーや、北米で20ヶ所(30リンク)以上のアイスリンクを運営管理されている会社のリーダークラス…といった方々だそうで、いずれも、NewTonのアンモニア/CO2冷却システムを中心に見学されておられました。
※北米の冷却方式は当時、アンモニア/ブライン(またはCaCl2(塩化カルシウム))方式が一般的だった。現在は、二段圧縮式冷凍サイクルでCO2を用いた冷却方式も市場に広がり始めている。
エコアリーナの標準モデルとして10年を経て
ーー導入から10年の間に機器の性能や稼働、マエカワの対応に関して、何か印象に残った出来事などはありましたか?
江田:私が埼玉アイスアリーナに着任してからはまだ3年なので、マエカワさんとは基本的に年に1度の保守点検と、さすがに10年経っているのであちこちの修繕をお願いするくらいの関わりしか持てていないのですが、去年の夏にNewTonが1台故障して動かなくなってしまったときのことは印象に残っています。残りの1台だけでは氷温を保つことが出来ませんので、放っておけばリンクが溶けてしまいます。夜の6時か7時くらいのことだったのですが、急いでさいたま営業所に連絡したところ、サービス担当の方がすぐに来てくださり、色々と調べてくれました。結果、インバーターの故障だということが分かり、色々手を尽くして予備のインバーターを取り寄せて交換していただいて、何とか事なきを得たのですが、後日、その故障が起こったのと同じ日に、マエカワの営業の方が当社の本社(パティネレジャー)を訪れて「そろそろ、寿命なのでインバーターの交換を検討された方がいいですね」という提案をされていたということを聞いてビックリしました。

ーー我々の営業が交換の提案をさせて頂いたその日に故障したということでしょうか?

高効率自然冷媒冷凍機「NewTon S」
江田:そうなのです。暑い日が続くとインバーターは壊れやすいという話をされていたそうで。確かにその頃は連日暑い日が続いていましたし、まさに営業の方が仰ったとおりのことがその日のうちに起こったので、当社の社長も笑っていました。その後、今後に備えて、予備のインバーターを持つことにして在庫用に何台か発注させて頂きました。西宮と新潟とここには同じ機種が入っているので、これからは何かあればお互いに融通し合うことが出来るようになりました。




ーーCO2ヒートポンプ式デシカント除湿機「chris(クリス)」については何かありますでしょうか?
江田:基本的に冬場は動かさなくても大丈夫なのですが、夏場はほぼ毎日24時間動いて場内の除湿をしているような状態ですね。以前いた施設には小さな除湿機しかなかったので、朝晩はリンク内がモヤで真っ白になるなんてことが良くあったし、そういうものだと思い込んでいたので、ここに来て初めてchrisの稼働を見たときは凄いなと思いました。夏場でもほとんどモヤが出なくて、出たとしてもオーバーフェンスが少し曇るくらいで済んでいる。モヤは夜中に出やすいので、その時間に貸切でリンクを使っているアイスホッケーのチームの方々なんかは効果を強く感じているのではないかと思います。

ーー実際にアイスアリーナの除湿用途で採用されているのは、埼玉アイスアリーナ様とひょうご西宮アイスアリーナ様だけですよね。
江田:そうですね。導入すれば良い効果があるのは分かっているのですが、除湿の技術もアイスリンク自体も10年の間にどんどん進化していますから、導入時に比べるとchrisほど大容量の除湿機械を標準的に導入しなくても充分に稼働できるようになってきているのかもしれませんね。



CO2ヒートポンプ式デシカント除湿機「chris(クリス)」

アイスアリーナの未来、業界の今後について
ーー江田様からご覧になって、今、アイススケート業界が抱えている課題や問題などありましたらお伺いしたいです。
江田:廃業したスケートリンクが再建できなかったのは、老朽化した設備を入れ替えるための資金繰りが難しいからです。そして、運営管理を行っている我々にとっては施設の維持管理費、特にコロナ禍をきっかけに電気料金が高騰したことが打撃になっています。ここ数年は夏の気温上昇が激しくて必然的に機器の稼働時間が増えていますし、NewTonのように効率が良くて、省エネルギー性が高い機器を使っていてさえ、電気料金については年々厳しい状況になりつつあります。
他にも、少子化によってスケート教室の参加者が減ってしまったり、私たちのような運営を担う人材も不足気味になったりと、マイナス要素も多いように思います。そんな中で、どこまでエコアリーナを追求していけるのか、今後の運営についてはこの先良く考えていかなきゃならないと思いますね。

ーー埼玉アイスアリーナ様では現在、具体的にはどんな対策をとられているのでしょうか?
江田:色々と模索中ではありますが、先ほどお話ししたシーリング加工で冷凍機の負荷を減らそうというのも対策のひとつですし、子供向けではなく大人向けのスケート教室を企画したりしています。フィギュアスケート競技自体の人気は年々上がっていますし、愛好家の方々はたくさんおられます。また、オリンピックシーズンになると来場者は激増する傾向にありますから、そういった層を確実に取り込んでいくことで、業界自体を盛り上げていければと考えています。

設備メンテナンスについてマエカワの担当者(右)と意見交換する江田支配人(左)

株式会社前川製作所
前川製作所は、東京都江東区に本社を置く、産業機械メーカーです。
産業用冷凍機やヒートポンプ、食品加工機械の製造と販売、プラントの設計・施工からアフターサービスまで一貫した事業を展開しています。1924年(大正13年)に前川喜作が創業してから約100年。
冷却技術に秀でた、世界各地に拠点を構えるグローバル企業です。
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