【エールのB面】エールPR隊長・安藤結衣さん 地元の思い届けたい

 
JR福島駅東口駅前広場にある古関裕而モニュメントを囲む「エールPR隊」。NHK福島放送局の職員で組織している

 本県が舞台となっている連続テレビ小説「エール」。地元のNHK福島放送局は、朝ドラを契機に本県を盛り上げようと活動している。局内の各部署の若手17人で組織する「エールPR隊」は全国に福島の魅力を発信しようと取り組みを進めている。放送再開が迫る中、「隊長」を務める安藤結衣アナウンサーに活動への思いを聞いた。

 全国へと発信

 エールPR隊の隊長としてどのような思いで活動しているのか。

 「県民に『エール』を楽しんでもらい、福島を全国に発信することが目標です。PR隊は各部署を横断するプロジェクトで、隊員のみんながそれぞれの計画を進めています。これからも『隊長』の自覚を持ち、現場から地元の声を届けていきたいです」

 本県ニュースを扱う番組「はまなかあいづTODAY」(月曜~金曜午後6時10分~)では「エール」をどう伝えているのか。

 「県内の盛り上がりを伝え、ゆかりの場所や人を紹介しています。先日は、劇中に登場する佐藤久志(山崎育三郎さん)のモデルである歌手・伊藤久男さんの出身地の本宮市から中継しました。楽譜はあるが、レコード化されてない曲を地元の方々に演奏してもらいました。また、山崎さんと、古関裕而さんの母校・福島商高吹奏楽部が連携して『栄冠は君に輝く』を演奏したときは、心を揺さぶられました」

 舞台裏を紹介

 「エール」の撮影現場を訪問し、出演者や制作の様子を紹介している。出演者の福島弁(福島ことば)はどうだったか。

 「撮影の合間にも、主人公・裕一役の窪田正孝さんや権藤茂兵衛役の風間杜夫さん、川俣銀行メンバーらが『福島ことば』で話していたことに驚きました。特に窪田さんは、だんだんと福島ことばが上達し、見た目や雰囲気も福島になじんでいくのが分かり、うれしかったです。『私も福島ことばに慣れてきた』(福島弁を披露)。今のイントネーションは過剰でしたね(笑)。まだ習得できていないですが、『福島ことば』を聞くと心が安らぎます」

 福島放送局の公式ツイッターでほぼ連日、「エール」の情報を発信しているようだが。

 「再放送をより楽しんでもらうため、撮影の裏話などを『隊長つぶやき』として紹介しています。ただのストーリー紹介ではなく、『このシーンにはこんな話があるんだよ』と違った角度から紹介することを意識しています。まだまだ書き切れないことはいっぱいあります。ちなみに、もうちょっとリツイートが増えるとうれしいです...(苦笑)」

 魅力的な場所

 新型コロナウイルス感染症の影響で「エール」効果はまだまだ低調。一方、再放送では福島や川俣が再注目され、観光面の起爆剤との期待が高まっているようだ。

 「私も放送をきっかけに県内にたくさんの観光客が訪れると想像していましたが、現状は違う状況になっています。私よりも、ドラマ関係者や地元の方々のショックは大きいでしょうね。ですが、この状況だからこそ、できることをめげずに探してPRしていきたいと考えています。コロナ禍の収束後に全国から福島観光に来てもらえるようになればいいですね。これまでよりも気を引き締めて頑張っていきます」

 安藤アナウンサーの初任地である本県の印象は。

 「夏の暑さに驚き、雪景色の美しさに感動しています。特にフルーツがおいしくて、モモは毎年家族に送っています。東日本大震災発生時は岐阜におりまして、福島というと震災関連のイメージが強かったです。福島に実際に住んでみたら、食べ物はおいしくて、観光地も多く、人も良い。こんないい場所なのに、全国ニュースでは震災関連が多い。福島の魅力が伝わる話題もどんどん発信していきたいと考えています」

 【NHK福島放送局ディレクター・仲村颯悟さん】 県民の生き方描いた

 NHK福島放送局が「エール」の主題歌「星影のエール」(GReeeeN)を使い、県内59市町村の魅力を動画や写真で構成した約5分のプロモーションビデオ(PV)が好評だ。制作の中心人物である入局2年目の放送部ディレクター仲村颯悟さんに思いを聞いた。

 PV制作の目的は。

 「東日本大震災を経験した福島が持つたくましさや困難に負けずに進む姿を伝えることで、困難に立ち向かう全ての人々に『エール』を送りたい―との思いを込めています。郡山市ゆかりのGReeeeNの主題歌に乗せて、福島が盛り上がり、県民に喜んでもらえたらうれしいですね」

 制作はどう進めたのか。

 「私も所属する『エールPR隊』が発案した企画です。県内59市町村の映像を使うコンセプトで今年2月ごろに制作を始めました。新型コロナの影響で新しい映像を撮影に行けず、過去のニュース素材や資料映像、自治体からの提供を受けて作りました」

 PVには全59市町村の魅力をどう詰め込んだのか。

 「単に曲に合わせた観光映像では何も伝わらないと思い、県民の生き方や人生を描こうと考えました。ですので被災地の復興や常磐線の全線再開などを盛り込んでいます。映像の並べ方や配置、取捨選択が大変でした。県民をはじめ、全国の人から感謝の声が届きました。多くの人からの反響に驚いています」

 沖縄出身の仲村さんからみた福島は。

 「着任前は原発事故の印象が強かったのですが、実際に福島に住んでみて、イメージはがらっと変わりました。豊かな自然や文化、たくさんの魅力があることを知り、広く伝えたいと思いました。このPVには私の福島への思いが色濃く反映されています」