(1)双葉のささやき ここにいると落ち着く

 
双葉町前田の稲荷神社境内にある「前田の大杉」。樹齢約千年、高さ約23.5メートルの大木です

 こんにちは、エミリーです! 2018年に旅行で初めて福島県に来て、福島県が大好きになって、赤べこに恋をしました。会津若松市で昨年2月から、移住体験をしています。最初は福島県の自然が好きでしたが、住み始めて、空、景色、人の心、食べ物、季節や建物など、全てが好きになりました。毎日、空を見て「幸せだな」って感じています。

 昨年は、初めて浜通りに行きました。移住体験を始める前に、福島のすてきな場所やものが一目で分かる、説明付きのイラストマップを描いたのですが、その時に双葉ダルマを初めて知り「いつかは双葉町へ行って 自分の目で見てみたい」と思っていたのです。

 あれ? 確か、福島県へ初めて来た時も、同じことを言っていた気がします。知人から福島県の話を聞いていて、「自分の目で見たい」と。

 双葉町に行ったのは3月。その時は残念ながら、双葉ダルマを見つけることができませんでした。でも、ほかに見に行きたいところがあったので、地元のまちづくり会社の方に行き方を教えてもらいました。

 古い大きな木があるのを知っていたのですが、名前を忘れ、「大きい松」としか思い出せませんでした。教えてもらったら、松ではなく杉の木。その大杉「前田の大杉」を見に行きましたが、とても大きく立派なので、その存在に圧倒されました。

 言葉で説明するのは難しいのですが、威圧される感じではなく、私を温かく見守ってくれているような、優しい感じがしたのです。

 その2カ月後、また双葉町へ行きました。そしてその後もまた双葉町へ。なぜか、どうしても双葉町に行きたくなってしまいます。

 双葉町へ行くと毎回、必ず大杉にあいさつします。「こんにちは!」。大杉は「あぁ、駐車が下手なフランス人が来た」と思っているかな? 

 散歩をしながら神社をお参りして、空を見たりキジさんにあいさつをしたりして...。シンプルですが楽しくて幸せな時間を過ごすことができます。

 今の双葉町しか知らない私は「以前の双葉町」をどこまで理解できるのか分かりません。でも、一つ分かっていることがあります。ここにいると心が落ち着く、ということです。

 帰る時間が来ると、大杉に「また来ます」と、ささやくように語り掛けます。

 必ず、また来るからです。

双葉町の都路街道双葉町の都路街道では、穏やかで優しい気持ちになりました

双葉町両竹にある諏訪神社双葉町両竹にある諏訪神社。神社へ行く道を上る途中にベンチがあります。
お参りした後でベンチに座り、双葉町をゆっくり見ることができます

 エミリー イラストレーター。東京と横浜で語学講師として活動した後、2021年2月から会津若松市で移住体験を開始。趣味は散歩。猫好き。自身のサイト「メリエマリス」で、赤べこのイラストや県内の「推し」スポットの紹介文とイラストマップなどを公開。オリジナルグッズも多数展開中。