【まち中華物語】菜華軒・白河市 寄り添う心、味の原点

 
家族と親戚のチームワークで人気の味を守る(右から)店主の渡辺さん、西牧さん、圭一さん、あや子さん、裕司さん(永山能久撮影)

 JR新白河駅近くにある菜華軒(さいがけん)に入ると、有名アスリートらのサイン色紙が並び、ドリンク類を除いて60種類という豊富なメニューが目に飛び込んでくる。「これでもメニューを減らしたんです」。店主の渡辺哲男さん(68)はお客の要望に応え、みるみるうちに増えたメニューを見て笑う。

 ボリューム満点

 開店は1989(平成元)年。新白河駅の周辺には、まだ田んぼや空き地が目立っていた。今では味に加えてボリューム満点のメニューが評判を呼び、昼食時にはサラリーマン、夕食時にはお酒と共に料理を楽しむお客らでにぎわう。

 渡辺さんが料理人になったのは約50年前だ。「手に職をつけ、食っていくために修業に出た」。都会への憧れもあり白河市から上京し、都内の中華料理店で修業を始めた。

 真面目にこつこつ仕事をこなし、3年後には埼玉県朝霞市にある商店街の一角に「中華料理一番」を開店させ、地域に根付いた店に育てた。

 「商店街の仲間が子育てを手伝ってくれたりして、思い入れのある場所だった」。12年間営業した店だったが、テナントを間借りする形ではなく、「自前の店舗を構えたい」との思いが強くなり、家族で古里に戻ることを決意。現在の場所に店を構え、心機一転の意味も込めて菜華軒として再出発した。渡辺さんは「店名は知り合いに名付けてもらった」と話す。

 ただ、開店当初は苦労も多かった。「常連客も付かず、開業から5~6年は辛抱の日々だった」。それでも「お客さんにおなかいっぱい食べてほしい」との思いから、おいしくてボリューム満点の料理を提供していると、雑誌の紹介や口コミで来店するお客も徐々に増え出し、人気店となった。

 しょうゆラーメンの上にマーボー豆腐がたっぷりとのせられた「麻婆麺」は人気メニューの一つ。マーボー豆腐の熱々のあんが麺に絡んでうまさを感じる一品だ。修業時代に常連客から「マーボー豆腐をラーメンにのせてくれないか」と頼まれて提供し始めた。お客に寄り添う渡辺さんらしいメニューだ。

 有名人も次々に

 それにしても気になるサイン色紙。ゴルフ選手が多い。西郷村で開催される男子プロゴルフのツアートーナメント「ダンロップ・スリクソン福島オープン」の出場選手らという。

 世界ゴルフ殿堂入りしている青木功さんもその一人だ。「ギョーザとハイボールを毎回頼んでくれる。ハイボールは氷少なめが好みらしい」と渡辺さん。「いろんな有名人が来てくれてうれしい」と頬を緩ませる。2018年の大相撲白河場所の際に訪れてニラレバ炒めなどをたくさん食べてくれたという大関・御嶽海関のほか、お笑い芸人や音楽アーティストらの名前が並ぶ。

 店内では渡辺さんをはじめ、妻あや子さん(68)、長男圭一さん(43)、次男裕司さん(40)、めいの西牧泰子さん(41)が協力し合いながら店を回す。常連客の顔は元気の源だ。渡辺さんは「常連さんの顔を見るだけで、何を頼むか分かるようになった。地元のお客さんに支えてもらっている」と感謝し、「何らかの形で恩返しをするという気持ちで、これからもおいしい料理を届けていきたい」との思いを込めて厨房(ちゅうぼう)に立ち続ける。(伊藤大樹)

お店データ

菜華軒の地図

【住所】白河市新白河3の8

【電話】0248・24・0312

【営業時間】午前11時~午後2時30分、午後5時~同8時30分(材料がなくなり次第終了)

【定休日】月曜日

【主なメニュー】
▽麻婆麺=850円
▽ラーメン=650円
▽タンメン(塩、醤油(しょうゆ))=800円
▽五目あんかけ焼きそば=850円
▽チャーハン=680円
▽麻婆丼=730円
▽中華丼=730円
▽天津丼=730円
▽オムライス=730円
▽カツ丼=830円
▽カレーライス=680円
▽野菜炒め=680円
▽ニラレバ炒め=750円
▽ホルモン炒め=750円
▽もつ煮込み=650円
▽八宝菜=700円
▽麻婆豆腐=700円

 【店主メモ】毎晩の晩酌が楽しみ。お客さんが料理を食べて喜ぶ顔を見た後の一杯は格別だ。

麻婆麺と塩タンメン人気メニューの麻婆麺と塩タンメン(奥)

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 NHKラジオ第1「こでらんに5 next」で毎週木曜に連携企画

 まち中華物語は福島民友新聞社とNHK福島放送局の連携企画です。NHKラジオ第1で毎週木曜日に放送される『こでらんに5 next』(休止の場合あり)のコーナー「ふくしま見聞録」で紹介される予定です。