【まち中華物語】中国四川料理太陽・郡山市 恩師の味を変えずに

 
開店から37年目を迎えた店で腕を振るう店主の佐藤さん(左)と長女の里美さん(吉田義広撮影)

 「料理の鉄人」として知られる陳建一さん。その父で、「日本の四川料理の父」とも言われる故陳建民さんの下で長く修業を積んだ佐藤和夫さん(79)が店主として腕を振るう。「『自分の口(味覚)を信じなさい』という建民さんの言葉を今でも覚えている」。40年以上変わらぬ味で、本場の四川料理を提供し続けている。

 名物料理は店の名前から名付けた「太陽(たいやん)麺」。命名の由来は開店間もないころまでさかのぼる。

 佐藤さんによると、創業した1979(昭和54)年、四川料理は現在ほど有名ではなく、客から「しかわ料理ですか」と言われるほど。今では麺料理として定着している担々麺も、当時の郡山ではあまり知られていなかった。

 自信ある料理を

 「一番自信のある料理を多くの人に食べてほしい」との思いから、佐藤さんが考えたのが料理に店舗名を冠することだった。一般的な担々麺と作り方は大差ないが、香料を10種類以上使った自家製ラー油や店で炒(い)ったゴマなど材料にこだわることで、他店にはない豊かな香りと、まろやかな味わいを実現している。

 四川料理は一般的に辛いイメージだが、「辛くない料理もメニューにたくさんあるよ」と佐藤さん。四川料理の代名詞マーボー豆腐も、大豆を発酵させた「豆鼓(とうち)」を豆の形のまま入れるなど建民さん直伝の作り方にこだわりつつ、客が好みを選べるように通常のものと「特辛」の2種類を用意している。

 戦中に中国東北部で生まれた佐藤さんは終戦後に日本に渡り、都内にある建民さんの「四川飯店」で3年ほど修業を積んだ。その後、仙台市の料理店などでの勤務を経て、両親の古里が二本松だったこともあり、郡山で開業することにした。

 妻陽子さん(73)と二人三脚で始めた料理店経営は最初から順風満帆とはいかなかった。なじみの薄い四川料理の味に、当初は「酢豚が甘い」といった言葉が客から飛んできた。人気店の評判が立つと「あの店の味に近づけては」とも言われた。

 丁寧な仕事続け

 それでも、建民さんに教わった味は決して変えなかった。「自分の口でおいしいものが、お客さんにとってもおいしい味だ」。恩師の言葉を信じて丁寧な仕事を続けると、徐々に常連客が集う店に。「久しぶりに来たお客さんに『味が変わらないね』と言われるとうれしいね」と佐藤さん。いわき市や白河市など遠方から足を運ぶファンもできた。

 郡山市での営業は現在の店で3店舗目。子どもたちの成長に合わせ「広い家に住めるように」と、JR郡山駅近辺から市役所近く、そして郊外にある現在の店舗と居を移してきた。

 夫婦と長女里美さん(42)の3人で切り盛りする現店舗での営業は今年で37年目を迎えた。「動けなくなるまで店は続けたいね」。巨匠譲りの料理への情熱を胸に、佐藤さんは今日も中華鍋を振るう。(大内雄)

お店データ

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【住所】郡山市大槻町字菅田55の5

【電話】024・951・9098

【営業時間】
午前11時30分~午後2時30分
午後5時~同8時30分
※火曜日は昼営業のみ
【定休日】水曜日

【主なメニュー】
▽太陽麺=850円
▽スペシャル太陽麺=950円
▽マーボー豆腐=935円
▽エビのチリソース=1320円
▽イカのカキ油炒め=1320円
▽五目焼きそば=950円
▽チンジャオロースー=1210円
▽ホイコーロー=1170円
▽焼きギョーザ=550円
▽ニンニクソースかけギョーザ=610円
▽本日のランチ=950円
 ※午後2時まで。日曜日と祝日は休み

【店主メモ】「今は違うと思うけど、当時は1日18時間は働いた」と、四川飯店で厳しい修業を積んだ時代を振り返る。年に1度開かれる陳建民さんと弟子の集まりに、郡山での開業後も足を運んでいた。

220828machichuka3.jpg自家製ラー油などを使った人気メニューの「太陽麺」

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 NHKラジオ第1「こでらんに5 next」で毎週木曜に連携企画

 まち中華物語は福島民友新聞社とNHK福島放送局の連携企画です。NHKラジオ第1で毎週木曜日に放送される『こでらんに5 next』(休止の場合あり)のコーナー「ふくしま見聞録」で紹介される予定です。