【TRY・地ビール造り(上)】麦芽をコトコト...仕込みは大事

 
寸胴に麦芽を入れる記者。醸造の下地をつくる大事な作業が続く

 コメ農家が造る地ビール。その響きに心が躍った。大人になってからはビール党を貫いている記者。農家でどのようにビールは造られているのか。味への興味が尽きない。知るためにはトライだ。福島市大笹生に先月、オープンした醸造所(ブルワリー)「イエロービアーワークス」の醸造作業に挑んだ。(報道部・小磯佑輔)

 果樹園と水田風景が広がる福島市の北西部。住宅地の中にある注目のブルワリーを訪ねた。「いらっしゃい」。ビールの泡をイメージしたという白い内装の店の奥から、社長の加藤晃司さん(40)と、専務で妻の絵美さん(39)が出迎えてくれた。

 水田と畑合わせて作付面積50ヘクタールでコメや野菜を作る加藤さんは、この日も水田での稲刈りの準備に多忙を極める中、ビールの仕込みを行っていた。県産のホップや大麦を原料とし、特産品の果物のビールも計画しているという。

 さっそく店内に入ると、香ばしい匂いに包まれる。原料の大麦の香りだ。ほかにも聞いてみたいことがたくさんあるが、「じゃあ造ろうか」。加藤さんの元気な掛け声で早速ビール造りが始まった。

 作業場には大きな寸胴(ずんどう)。まずは麦芽を煮る作業からだ。数種類の麦芽を寸胴に投入。68度に温めた200リットルの水で1時間煮る。麦芽の中にあるでんぷんの「糖化」が目的だ。

 この糖がビール造りで重要な発酵の下地となる。煮ることで麦芽の中に含まれる酵素の働きが活発化してでんぷんを分解し、糖に変える。

 糖化させた麦汁を飲ませてもらうと、麦の香ばしい香りとともに、果物を食べているかのような甘さだ。

 麦からは想像がつかない甘み。自然の力の偉大さを垣間見たかのようだ。

 醸造に向けた重要な作業が続く中、加藤さんからふいにバケツを手渡された。「ここからは独自だよ」。農家によるビール造りの奥深さを知る作業が待っていた。

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 イエロービアーワークス 醸造するビールは華やかな香りやフルーティーな味わいに加え、控えめの苦みが特長。価格は1杯(ハーフパイント)500円(税別)から。720ミリリットル瓶は1500円(税別)から。再利用可能な特製の瓶は別売り。営業日は金、土、日曜日。営業時間は午前11時(金曜は午後3時から)~午後6時。福島市大笹生字横堀12の1。問い合わせはカトウファーム(電話090・1106・4238)へ。