楽しさや便利さの中に、危険な情報が紛れ込んでいる交流サイト(SNS)はもろ刃の剣だ。SNSの弊害から子どもを守る責任が大人にはある。
オーストラリア議会が国家レベルで初めて、16歳未満のSNS利用を禁止する法案を可決した。規制に慎重な意見が一定数あり、難しい判断となるなかで子どもの安全を最優先にした形だ。
禁止対象はインスタグラムやX(旧ツイッター)などで、ユーチューブや一部アプリは教育や保護者との連絡に役立つ面を考慮して除外された。子どもや保護者が違反しても罰せられない一方、深刻な違反をしたSNS事業者には最大約50億円の制裁が科される。
SNSは交友関係づくりや興味のある情報の収集などに便利だ。ただ、いじめや自殺、違法薬物の使用などを誘発しかねない情報もまじっている。
日本でもSNS上でのいじめなどが問題となっているが、学校や事業者などが有効な対策を打てているとは言い難い。政府は、国としてどう子どもを守るのか、早期に方針を示すべきだ。
SNSで知り合った相手に自分の裸を撮影して送らされたり、わいせつな行為をされたりする小学生の増加傾向に歯止めがかからない。警察庁によると、2023年の被害児童数は139人で、約10年前と比べて3倍以上増えた。
犯罪に遭う恐れのあるインターネットの情報環境に、いきなり子どもを飛び込ませるのではなく、段階を踏んで利用の幅を広げるべきとの指摘がある。こども家庭庁の有識者会議では、事業者が取るべき方策の一つとして、小学生専用のSNSの提供が挙がった。
子どもの成長に応じたSNSの利用環境が整備できれば、過激な表現や誹謗(ひぼう)中傷などを監視しやすくなるだろう。事業者は、子どもを装った大人が利用できない仕組みを構築するなど、課題に対応しながら開発と普及を進めるべきではないか。
県の調査では、子どもがネット上でトラブルになったことがあるとの回答が約1割あった。保護者が把握していないだけで、子どもがSNSを通じて知らない人とやりとりしたり、誰かを傷つけるメッセージを送ったりしているケースがあるはずだ。
保護者は、子どものSNSの利用状況や、フィルタリング機能が解除されていないかなどを確認してほしい。SNSの使い方について話し合い、子ども自身が情報を見極め、危険を回避できるよう、大人が導くことが大切だ。