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【1月11日付社説】双葉地方の復興展望/不断の環境改善で人口増を

2025/01/11 08:10

 東京電力福島第1原発事故で住民避難を余儀なくされた双葉地方では、今年も復興に向けた取り組みが進む。新たな施設整備や民間企業の進出などを原動力として、生活環境の充実や地域経済の活性化につなげていくことが重要だ。

 まちづくりの側面では大熊町のJR大野駅西口で3月、産業交流施設と飲食店などが入居する商業施設が全面的にオープンする。双葉町では、6月に町役場近くに生鮮食品を扱うスーパーが入居する公設民営の施設の完成が予定されるなど、双葉駅東口周辺の整備が進む見通しだ。

 双葉地方では、住民や復興事業に従事する人が複数の自治体の店舗などを行き来しながら買い物している。両町の施設の完成は、大熊町北部から双葉町までの店舗の空白地帯を埋め、広域的な買い物環境が向上することを意味する。各町村にはこの機を捉え、住民の帰還や他地域からの移住促進に再度力を入れ、定住人口の増加に結び付けていくことが求められる。

 帰還困難区域の扱いを巡っては、大熊、双葉、浪江、富岡の4町で、帰還の意向を示した住民の家屋などを中心とした「特定帰還居住区域」での除染や解体工事が行われている。国は2020年代に希望者全ての帰還を実現する方針を掲げていることから、各町と協力して2回目の住民に対する意向調査を進めている。

 このうち、浪江町では昨年12月2日現在で新たに59世帯が帰還の意向を示しており、住民の帰還への思いと意向を把握する継続調査の必要性が改めて浮き彫りとなった。各町では調査結果が出そろい次第、特定帰還居住区域の範囲などを定めた復興再生計画を変更し、避難指示の解除を目指すエリアの拡大を図る方針だ。

 各町の担当者からは「区域指定された場所の除染などが進み、生まれ変わった集落の姿を見れば、帰還を判断する住民は増えるのではないか」との指摘がある。国は除染状況の定期的な情報発信に加え、関連する工事を可能な限り前倒して解除のめどを示し、帰還困難区域の再生を前に進めていくことを肝に銘じなければならない。

 民間の動きでは、富岡町で住民有志の活動が起点となったワイナリーの整備が進み、春ごろのオープンが見込まれる。葛尾村では、人工知能(AI)を使いこなす人材を養成する機能を備えたデータセンターの完成が予定されている。民間と自治体が連携し、観光交流や人材育成など、これまで十分でなかった分野に着手する1年にしていくことも大切だ。

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